研究概要 |
アメリカシロヒトリ核多角体病ウイルス(HycuNPV)のゲノムには,hycu-iap1,hycu-iap2,hycu-iap3遺伝子が存在する.これまでに,hycu-iap3遺伝子産物(Hycu-IAP3)が,ウイルス感染およびアクチノマイシンDによって誘導されるアポトーシスに対して阻害活性のあることを示した.一方,hycu-iap1およびhycu-iap2遺伝子産物(Hycu-IAP1,Hycu-IAP2)にはアポトーシス阻害活性が認められず,その機能は明らかでない.アポトーシス阻害遺伝子(p35遺伝子)欠損AcMNPV(vΔp35)感染によるアポトーシスに対する阻害活性を調査する中で,vΔp35感染と同時にHycu-IAP1を発現させることよって,vΔp35感染のみと比較してより強いアポトーシスが誘導され,Hycu-IAP1にはアポトーシスを促進するはたらきのあることが予想された. そこで今回は,Hycu-IAP1のアポトーシス誘導活性について検討した.hycu-iap1遺伝子を挿入した発現プラスミドを種々の昆虫培養細胞にトランスフェクション法により導入し,アポトーシスの誘導を顕微鏡観察およびカスパーゼ活性測定により調べた.その結果,Hycu-IAP1の発現によって,Sf9,Ld652Y,High5,S2細胞でアポトーシス小体が観察され,カスパーゼの活性化が認められた.また,Hycu-IAP1と同時にHycu-IAP3をSf9細胞で発現させると,アポトーシスは抑制された.以上の結果から,Hycu-IAP1にはアポトーシス誘導活性のあることが示唆された.
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