研究課題
核多角体病ウイルス(NPV)感染が誘導するアポトーシスは、細胞の抗ウイルス応答であり、NPVの宿主特異性を決定するための重要な要因であると考えられる。本研究では、マイマイガ由来のLd652Y細胞が、5種の異なる昆虫から分離されたNPV、すなわちカイコNPV、アメリカシロヒトリNPV(HycuNPV)、シロイチモジヨトウNPVおよびハスモンヨトウNPV感染によって、容易にアポトーシスを誘導することを見出した。アポトーシス様形態を示したこれらのNPV感染Ld652Y細胞において、実際にアポトーシスが誘導されていることは、細胞DNAの断片化、およびアポトーシスの実行に与るプロテアーゼであるcaspaseの活性上昇によって確認した。特に著しいアポトーシスを誘導したHycuNPV感染Ld652Y細胞におけるウイルス増殖様相を詳細に調べたところ、ウイルスDNAの複製は認められたが、出芽ウイルスとポリヘドリンの産生は認められなかった。また、HycuNPVがコードするアポトーシス抑制因子であるHycu-IAP3のLd652Y細胞における発現量は、アポトーシスを誘導しないHycuNPV感染SpIm細胞におけるそれと同程度であった。これらの結果より、NPV感染が誘導する抗ウイルス応答としてのアポトーシスは、一般にウイルスの特性よりも、細胞の特性に大きく依存していることを示唆した。また、caspaseの阻害剤であるzVAD-FMK処理によりHycuNPV感染が誘導するLd652Y細胞のアポトーシスは抑制されたが、Ld652Y細胞におけるHycuNPVの増殖は促進されなかった。このことから、Ld652Y細胞におけるHycuNPVの増殖は、アポトーシスとは異なる機構によって制限されていることを示唆した。
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