研究課題/領域番号 |
14206012
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
宮川 都吉 広島大学, 大学院・先端物質科学研究科, 教授 (10116676)
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研究分担者 |
水沼 正樹 広島大学, 大学院・先端物質科学研究科, 助手 (10343295)
平田 大 広島大学, 大学院・先端物質科学研究科, 助教授 (30243603)
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キーワード | Saccharomyces cerevisiae / Ca^<2+>シグナル伝達 / カルシニューリン / 細胞周期抑制 / S-アデノシルメチオニン / S-アデノシルホモシステイン / チェックポイント |
研究概要 |
われわれは、Ca^<2+>シグナル伝達の活性化による細胞周期G_2/M期制御分子機構の解析を行っている。これまでに、この経路に欠陥をもつ変異株(scz)を多数取得し、順次解析を進めている。今年度はscz7変異株の解析を行った。scz7変異はS-アデノシルホモシステイン加水分解酵素遺伝子(SCZ7/SAH1)の変異であることが明らかになった。scz7/sah1変異株では同酵素の基質S-アデノシルホモシステインの他に、その前駆物質S-アデノシルメチオニンを細胞内に著量蓄積していることが明らかになった。S-アデノシルメチオニンは、細胞内におけるメチル化反応のメチル基供与体として重要である。一方、S-アデノシルメチオニンの脱メチル化産物S-アデノシルホモシステインはS-アデノシルメチオニンの拮抗阻害物質としてメチル基転移酵素を阻害するため、その細胞内蓄積は細胞毒性を有する。このため、scz7変異株では細胞内に著量のS-アデノシルメチオニンを生産してS-アデノシルホモシステインの毒性を緩和する制御系が働いたと考えられる。sah1変異株ではSWE1およびCLN2遺伝子のmRNAおよびたんぱく質レベルが著しく低下し、細胞周期G_1期遅延が観察された。細胞外から加えたS-アデノシルメチオニンおよびS-アデノシルホモシステインにも同様の作用が観察された。Ca^<2+>の細胞周期制御はSwelpの活性化を通じて行われているので、S-アデノシルメチオニ/S-アデノシルホモシステインのSWE1転写抑制効果が、Ca2感受性の表現型を抑圧したと考えられる。また、G_1期遅延は時的であった。以上の研究からS-アデノシルメチオニンの細胞周期制御における新規機能が明らかになった。S-アデノシルメチオニンの制がん剤としての用途開発の可能性が考えられる。
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