研究課題/領域番号 |
14206019
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
柴田 叡弌 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 教授 (30252282)
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研究分担者 |
佐藤 宏明 奈良女子大学, 理学部, 助教授 (20196265)
梶村 恒 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助手 (10283425)
肘井 直樹 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助教授 (80202274)
日野 輝明 独立法人森林総合研究所, 関西支所, チーム長
横田 岳人 奈良女子大学, 理学部, 助手 (60304151)
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キーワード | 生物間相互作用 / ニホンジカ / ミヤコザサ / 樹幹剥皮 / 食植生昆虫 / 鳥類 / 樹種選択性 / 樹皮成分 |
研究概要 |
ニホンジカによる剥皮害が発生し森林の維持が困難な状況にある奈良県大台ヶ原において、ニホンジカの被食圧が高い防鹿柵外とそのの影響を排除した防鹿柵内とで、ミヤコザサの生理生態的特性と植食性昆虫の種構成・成長量を比較し、以下の結果を得た。 1.柵外のミヤコザサの地上部・地下部現存量はともに季節を通じて柵内の約1/2ほどであった。 2.ミヤコザサの窒素含有率は、地上部・地下部のどの器官においても季節を通じて柵外が柵内を上回っていた。 3.柵外のミヤコザサ群落の葉は、柵内の群落の葉に比べ光合成系の窒素含有物質量、光合成能力ともに高い値を示した。この光合成能力の増大は、被食圧がもたらす形態の矮小化による光合成生産能力低下の補償に役立っている可能性がある。 4.柵外のミヤコザサはニホンジカの被食によって葉と稈の矮小化と分枝数の増加がみられたが、展葉期の延長や二次成長みられなかった。しかし、葉の延命がはかられていることが明らかになった。 5.柵外と柵内では鱗翅目幼虫の種数に違いがなかったが、密度は柵内が柵内より高かった。また、優占種であるウスグロアツバにおいて、幼虫の体サイズが柵内で柵外を上回っていた。 6.ミヤコザサの葉に寄生するカイガラムシ密度は柵内が柵外より高かった。 さらに同じく大台ヶ原において、ニホンジカの密度の違いが森林植生の改変をとおして鳥類群集に及ぼす影響を調べ、以下の結果を得た。 1.シカ密度の高いところでは,採食によって下層植生の密度が減少するために下層を利用する鳥が少ない一方で,樹皮の採食によって枯死木が増えるために樹洞を利用する種類が多かった。 大台ケ原において、ニホンジカによる樹木剥皮の被食量、樹種選択性、樹皮の含有成分と剥皮発生の関係について調査し以下の結果を得た。 1.調査した24樹種のうち9種(針葉樹3種、広葉樹6種)が剥皮を受けていた。このうち剥皮面積が最大であったのはリョウブであった。 2.樹種選択性が高いのもリョウブであり、次いでフウリンウメモドキであった。 3.樹種選択性と樹皮の含有成分との相関をみた結果、Caのみに有意な負の相関がみられた。
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