研究分担者 |
肘井 直樹 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助教授 (80202274)
梶村 恒 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助手 (10283425)
佐藤 宏明 奈良女子大学, 理学部, 助教授 (20196265)
横田 岳人 龍谷大学, 理工学部, 講師 (60304151)
日野 輝明 独立行政法人森林総合研究所, 関西支所, チーム長
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研究概要 |
1.大台ケ原のミヤコザサは、ニホンジカによる被食圧に対して小型化、窒素濃度の増大、光合成能力の向上、という反応を示している。このうち小型化は、シカによる接触や踏みつけなどの物理的刺激に反応して、細胞増殖が抑制されることで起きる可能性が高いことを明らかにした。また、プロテクトケージを利用して様々なサイズのササを作成したところ、植物体サイズと葉の窒素濃度あるいは光合成能力との間に負の、窒素濃度と光合成能力との間に正の相関関係が認められた。このことから、被食圧に対応して小型化することで植物体内の窒素濃度が自動的に上昇し、それに伴って光合成能力が向上するという連鎖反応が起きている可能性が示唆された。 2.正木峠防鹿柵付近で過去4年間行った糞粒除去調査結果をもとにシカの利用頻度をまとめたところ,2003年までの3年間はほぼ同様の利用頻度であったが,2004年は利用頻度がそれまでの約半分に低下した.これは,2003年秋から実施されている個体数調整の結果,シカの頭数が減っているためと考えられる.この結果は,糞粒数によって個体数調整の効果を評価する手法の開発の一助となる.正木峠防鹿柵の内側(シカ除去区)と外側(対照区)での過去4年間の鱗翅目幼虫の密度と多様性の変化を比較したところ,全体として固体数,多様性ともに年を経るに従い減少し,当初は柵内で密度,多様性が高かったにもかかわらず,現在は差はなく非常に低い値となっている.その原因は不明である。また、ササに寄生するカイガラムシの生活史と密度を柵内外で比較した。 3.ササを刈り取った条件下での発生後3年間の生存率は、ブナとアオダモがウラジロモミとカエデより高かったが、ササ現存量が増えるにつれて生存率は逆転し0.3kg m-2ではブナはほとんど生存できなかった。現在のササ地上部現存量の約2倍の0.2kg m-2程度であれば、樹種によって違いはあるもののかなりの実生は生存可能であった。トウヒとウラジロモミの年輪解析の結果、樹齢にかかわらず1960年以降に明瞭な肥大成長の遅延が共通して認められ、伊勢湾台風時の樹冠消失にともなうミヤコザサ繁茂の影響が推測された。成長速度は小さく、樹齢100年の個体で樹高が10-15m、胸高直径約30cmであった。 4.大台ヶ原の過去の植生を知るために花粉分析を行った。
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