研究概要 |
本研究は、高度に規制されたセルロース誘導体、即ち高位置選択的置換セルロース誘導体の自己組織性と金属(無機)複合体形成能を利用した、少量・高付加価値新素材、新機能性材料の創製とのそ利用開発を確立するための基礎的知識を集積することを目的に進められている。初年度の成果を踏まえ、今年度は主に、前年度の予備実験で調製されたセルロース誘導体のLB膜の調製法の確立と金属錯体調製法の予備実験を行った。研究結果下記に記載する。 1)LB膜の調製法の確立:既に、3置換長鎖アルキル置換セルロース誘導体のY型LB膜の調製については報告されているが、今回、多くの試行錯誤の繰り返しの結果6位モノ置換体のZ型LB膜の調製に初めて成功した。この膜調製のキーポイントは3点、即ち、1)転写率1.0を得るためには水面状で生成した単分子膜の基盤への転写速度が極めて重要であること、2)多層膜の調製には、最初の単分子膜の転写の後に加熱乾燥し基盤と膜との結合を強固にすること、3)膜の転写毎に単分子膜ドメインを均一にすることである。この方法により25層(膜厚:47.5nm)以上のLB膜を調製した。透過UV及び蛍光スペクトル、AFMおよびエリプソメトリーによる膜厚測定、透過/RAS赤外線スペクトロメトリーから得られた膜特性評価から、各層の単分子膜では長鎖アルキル基が折り畳まれ、膜の均一性に寄与していることが推定された。 2)金属錯体調製:LB膜が調製されたセルロース誘導体の2,3位の水酸基への金属機能性官能基(例としてフェロセン)の導入を勧みた。その結果、スペーサを用いると高収率で目的のフェロセン誘導体が調製し得ることが判明し心これらの誘導体の積層により、例えば、有機EL素子として利用可能な電子特性制御LB膜の調製の可能性が開かれた。 3)得られた結果の一部を論文として報告した。 なお、研究分担者のD.Klemm教授とは研究の結果の報告と方向性等についてメールなどで意見の交換をし、またイタリアで開催されたGordon Research Conference(May 4・9,2003,Il Ciocco, Barga,中坪が本研究成果の一部を招待講演として発表)の折りにも十分議論し検討をした。
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