研究概要 |
本研究は、高度に規制されたセルロース誘導体、即ち高位置選択的置換セルロース誘導体の自己組織性と金属(無機)複合体形成能を利用した、少量・高付加価値新素材、新機能性材料の創製その利用開発を確立するための基礎的知識を集積することを目的に、平成14年から16年の3年計画で進められている。平成14-15年度に得られた結果に基づき、本研究の最終年度では、セルロースの役割分担型機能化のコンセプトとし進めてきたトリチル誘導体の有用性を検証しその電気化学デバイスとしての利用可能性を検討した。 1)トリチル誘導体の有用性:前年度で、天然セルロースから調製した6-O-trityl誘導体から平滑で安定な単分子膜が形成され垂直浸漬法によりLB膜が調製されることが判明した。この場合、疎水性で嵩高いtrityl基が高いLB膜形成能を発現しているとも考えられた。そこで、trityl基を持たない置換度1.00の種々の長さの6-O-アルキルセルロース(C_nC:n=1,2,3,4,8,12,18はアルキル炭素数)のLB膜形成能を検討した。一連のCnCの調製は申請者が開発したセルロース合成法を適用した。その結果、LB膜の形成にはtrityl基は必ずしも必要ではなく、セルロースの無水グルコース単位当たり、1本のアルキル鎖の疎水性でもZ型LB膜の調製が可能であることが判明した。 2)電気化学デバイスとしての利用可能性:セルロースの役割分担型機能化のコンセプトとは、6位の水酸基には、セルロースの溶解性および溶融性を向上させる目的で長鎖アルキル基を導入し、他方2,3位の水酸基には、機能性官能基を導入してセルロースの機能性発現を達成するものである。そこで、2,3位に電気化学的特性を付与する目的で、フェロセノイルセルロース誘導体C_<18>TCFの調製とそのLB膜形成能と膜特性について検討した。その結果、C_<18>TCからフェロセノイル基の置換度が1.09(2,3位のいずれかに導入)の調製に成功し、その誘導体から均質で平滑なZ型LB膜が調製し得る事も判明した。また、電極上に累積された単分子膜のサイクリックボルタンメトリーから、フェロセン由来の酸化還元電位が確され、電気デバイスとしての利用が示唆され、新たな電子特性制御LB膜の利用として興味深い。
|