研究課題/領域番号 |
14206025
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
荒川 修 長崎大学, 水産学部, 教授 (40232037)
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研究分担者 |
野口 玉雄 (財)日本冷凍食品検査協会, 技術顧問 (40011910)
高谷 智裕 長崎大学, 水産学部, 助教授 (90304972)
橘 勝康 長崎大学, 水産学部, 教授 (20171712)
前川 修治 長崎市水産センター, 所長
谷川 昭夫 長崎漁港水産加工団地協同組合, 専務理事/研究製造部長(研究職)
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キーワード | 養殖トラフグ / 抗体価 / 幼若化 / フグ毒(TTX) / 麻痺性貝毒(PSP) / 薬物代謝酵素 / 血漿リゾチーム活性 / ホシフグ |
研究概要 |
まず、昨年度に引き続き「フグ毒を用いたフグ養殖」の実用化を想定した飼育試験を行った。養殖トラフグ当歳魚を2,500尾ずつ3つの網生け簀に収容し、(1)生餌・魚粉にナシフグ残滓を混ぜて与える区、(2)残滓をタンパク質分解酵素デナプシンで処理したものを混ぜて与える区、(3)生餌・魚粉をそのまま与える区、の3区を設定し、60日間飼育した。その結果、今回新たに調査項目に加えたエラ虫ヘテロポツリウムの寄生状況に関しては、フグ毒投与の効果は確認できなかったものの、抗体価ならびに脾臓細胞の幼若化を指標とした免疫機能の評価においては、これまでの試験同様、毒添加餌料投与区((1)および(2))は対照区((3))に比べて高い数値を示すことがわかった。 一方、フグの毒蓄積機構もしくは毒による免疫機能活性化の機構解明の一助として、以下のような実験を行った。まず、70尾ずつ3つの室内水槽に収容した養殖トラフグ当歳魚にフグ毒(TTX)添加餌料、麻痺性貝毒(PSP)添加餌料、および無毒餌料をそれぞれ与えて60日間飼育したところ、比肝重値や肥満度は3区の間で差がないが、添加餌料を投与した2区は、対照区に比べNADPH-cytochrome P450 reductase、ethoxyresorufin-O-deethylase等、肝臓中の数種の薬物代謝酵素の活性が有意に低いことが明らかとなった。さらに、別途行った同様の飼育試験において、TTX投与区は、PSP投与区や無毒餌料投与区に比して、血漿リゾチーム活性が顕著に高いことなどが示された。他方、ナシフグの卵巣は、1月から5月にかけて成熟が進むにつれて毒力が高まり、主に卵黄胞期の卵黄胞、第一次ないし第二次卵黄球期の卵黄球、排卵後の退行変性卵等にTTXの分布(免疫染色陽性反応)が認められること、ホシフグは皮に微量のTTXをもつが、同時に成熟が進んだ卵巣にはサキシトキシン(STX)とそのデカルバモイル体を主成分とする著量のPSPを保有すること、などを明らかにすることができた。
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