研究概要 |
北日本の寒冷湿潤気候に適応したノントキシック・エンドファイト系統の探索と実用化を目的に、トールフェスクとペレニアルライグラスについて,平成14年から平成16年度までの3年間にわたりエンドファイト感染個体の組織的収集を行った。収集したエンドファイト感染個体を分析した結果、家畜に有害なアルカロイド成分(Ergovaline, Lolitrem B)が少ない個体として深浦から収集したエコタイプの有望性が認められた。深浦エコタイプの菌糸は他のペレニアルライグラスと形態的に差はなく、エンドファイトのリボゾームRNA遺伝子の部分配列決定による検討の結果、エンドファイトはN.loliiであることを確認した。深浦エンドファイト菌を分離し,エンドファイトフリーの他の牧草個体に接種して植物中のLolitrem B含量を分析したところ、同一エンドファイトでも接種個体間に大きな差がみられた。エンドファイト感染、非感染個体の根の伸長量を水耕培養で比較したところ、両草種とも感染個体は2次根の根長が長くなり、寒冷湿潤地帯においてもミネラル吸収促進の効果が得られると期待された。葉身部におけるミネラル割合は、トールフェスクでは感染個体のリンとイオウ含量が高く、ペレニアルライグラスでは感染個体のリン含有率が高かった。エンドファイト感染牧草を農業場面で利用する場合は,エンドファイトが産生するアルカロイドの家畜に対する毒性を確認する必要がある.家畜に有害なアルカロイド成分を含む牧草飼料を供試し、動物実験によるアルカロイドの種類と家畜毒性の関係の解明を行った。マウスを供試してペレニアルライグラスの野生型エンドファイト感染と非感染の牧草種子を給餌した場合の違いを調査した結果、エンドファイト感染種子の給餌によって体温の上昇が認められた。スタッガーなどの発作症状は認められなかったが、ロタロッド機能の低下が観察された。
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