研究課題/領域番号 |
14206034
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
後飯塚 僚 東京理科大学, 生命科学研究所, 助教授 (50301552)
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研究分担者 |
北村 大介 東京理科大学, 生命科学研究所, 教授 (70204914)
香山 雅子 東京理科大学, 生命科学研究所, 助手 (80318229)
久保 允人 東京理科大学, 生命科学研究所, 助教授 (40277281)
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キーワード | アレルギー / サイトカイン / シグナル伝達 / IgE受容体 / マスト細胞 / ナチュラルキラー細胞 / ナチュラルキラーT細胞 / メモリー細胞 |
研究概要 |
アレルギーの発症にはマスト細胞やNKT細胞などの様々な免疫系細胞が関与している。これらの細胞にはIgEや抗原に対する免疫レセプターが発現しており、レセプターを介したシグナルにより活性化がおこる。SLP-76とMISTは免疫レセプターからのシグナル伝達に関与する分子構造上類似したアダプター分子である。本年度は、SLP-76、MIST単独および二重欠損マウス由来の免疫系細胞を用いて、SLP-76とMISTの機能的類似性や相違を検討し、免疫レセプターを介した細胞の活性化機構について以下の知見を得た。 1.SLP-76/MIST単独または二重欠損マウスの脾臓細胞数は、野生型マウスに比べ、MIST、SLP-76、SLP-76/MIST欠損の順に増加していた。各種血球細胞系列に特異的に反応する抗体を用いてFlow Cytometryにより、増加している細胞系列について解析したところ、B細胞数がMIST欠損では野生型の約1.6倍、SLP-76欠損では約3.4倍、SLP-76/MIST二重欠損では約5.3倍に増加していることが明らかになった。 2.高親和性IgE受容体を介したマスト細胞の脱顆粒反応は、SLP-76とMISTの遺伝子量(gene dosage)に依存して低下し、二重欠損では脱顆粒反応がほとんど認められないことが判明した。 3.NKT細胞の分化はSLP-76欠損マウスでは認められず、一方MIST欠損マウスではNKT細胞分化の亢進が観察された。NKT細胞のT細胞レセプター刺激によるIL-4産生を解析したところ、マスト細胞の場合と同様、SLP-76とMISTの遺伝子量依存的にIL-4産生が低下した。 4.SLP-76欠損マウスでは、胸腺においてCD4^-CD8^-細胞からCD4^+CD8^+細胞への分化が認められなかった。しかしながら、SLP-76/MIST二重欠損マウス胸腺においては、わずかにCD4CD8細胞への分化が回復した。 以上の結果から、MISTとSLP-76はマスト細胞やNKT細胞のシグナル伝達においては協調的に機能しているが、NKT細胞や胸腺におけるT細胞分化に関与するシグナル伝達においてはSLP-76とMISTは逆の機能をもつことが示された。細胞系列やその分化段階によるSLP-76とMISTの機能的類似性と相違はFgrなどの相互作用するシグナル分子の差異に起因する可能性が示唆された。
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