研究分担者 |
夏原 由博 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 助教授 (20270762)
中村 太士 北海道大学, 農学研究科, 教授 (90172436)
山口 裕文 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (20112542)
遊磨 正秀 龍谷大学, 理工学部, 教授 (80240828)
今西 純一 京都大学, 地球環境学堂, 助手 (80378851)
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研究概要 |
保全と再生が課題となっている場所や生物を対象に生態系評価手法に関する研究を進め、総括的な研究集会を開催した。新たな成果は以下の5点である。 1)琵琶湖岸の早崎内湖再生に向け、内湖跡地の埋土種子による再生可能性を実験的に検討し、蒔き出し翌年にササバモが発芽した。以前の実験では当年中に沈水植物(マツモ,シャジクモ)の発芽を確認しており,蒔き出し時期が低温処理との関係で重要な意味を持つ。 2)外来魚による在来魚類群集への影響が懸念されるなか、水生植物群落は多くの在来魚の産卵場や仔稚魚期の生育場所として期待される。琵琶湖での実態調査と、室内実験の結果、外来魚のオオクチバスよりも在来魚のニゴロブナ仔稚魚の方が高い貧酸素耐性をもち、ヨシ群落が春から秋までニゴロブナの隠れ家を創出する可能性が示唆された。豊富に酸素を含んだ沖帯の湖水が群落奥部まで流入しないような、厚みまで考慮したヨシ群落保全が必要と考えられる。 3)止水性のサンショウウオやカエル類,カヤネズミの生息地モデルの開発を行なった。一方で,カスミサンショウウオについて個体群存続可能性分析評価との比較を行なったところ,小規模な生息地が点在してメタ個体群を形成している場合には,両者の結果が一致しない場合が生じる。変動する環境で非平衡な要因によって個体群が調節されている場合には,HEPの適用は慎重さが要求される。 4)京都市を事例とし、生物多様性の保全の観点から、野生生物生息地の保全システムのギャップ(保全が十分でない地域)を探し出し、自然を優先的に保全・復元するべき地域と、復元目標となる潜在的植物群落を特定するための新しい分析手法を提案した。 5)水辺を構成する樹種に関して河川の地形撹乱と樹木種の生活史戦略をまとめ、樹木種は更新チャンスを最大化するように様々な生活史戦略を駆使していることを明らかにした。
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