研究概要 |
転写因子はさまざまな生体刺激に反応して,転写を活性化・抑制化することで標的遺伝子の発現を制御する.しかし,遺伝子発現の『ON』や『OFF』は,単純に転写因子自身の遺伝子発現の"all or nothing"の反応ではなく,タンパクとして既に"待機"している転写因子の活性調節が必須で,modificationによって精巧にチューニングされている. 転写コファクターであるCBP/p300がヒストンアセチル基転移酵素(HAT)の活性を持つことが明らかにされたことがブレイクスルーとなり,クロマチンの基本構造を支えるヒストンのアセチル化をはじめとするリン酸化やメチル化の修飾によるりモデルリングが注目を集めている.一方,CBPと結合するE2F, MyoD, GATA-1,GATA-3,EKLF, HNF-4などの転写因子は,アセチル化でDNA結合活性と転写活性が増強される事が証明された. 申請者らは,『フォークヘッド(FOXO)ファミリー転写因子・Foxo1がCBPと結合してアセチル化されることで,転写活性が抑制される』ことを発見し,【アセチル化=転写活性化】という定説を覆した.さらに申請者らの研究から,Foxo1はリン酸化と共役してユビキチン化される事が判明している(未発表).このように,Foxo1は《多重修飾》を受けますが),その生理機能は不明である.そこで,本研究は以下の4点に焦点を絞り,『転写制御因子の多重修飾と機能調節』の生物学的意義を明らかにすることを目的とした. (1)アセチル化による転写抑制機構の解明: (2)ユビキチン化による転写制御機構の解明: (3)多重修飾の共役リレー制御の解明: (4)修飾制御の個体機能の解明: 本年度は,プロテオソーム阻害剤MG132によるFoxo1タンパク質のHepG2における安定化は,ユビキチン依存的な分解を阻害することで増強されたことを明らかにした.さらに,インスリンによるユビキチン化の促進は,リン酸化依存的であり,且つ細胞質局在が重要であることが判明した.今後は,ユビキチン化とリン酸化・アセチル化との多重修飾の関係を明らかにしていく予定である.
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