研究課題
基盤研究(A)
まず第1に、脳虚血時の脳腫脹と脳障害の原因となるグリア細胞の乳酸アシドーシス性細胞膨張とネクローシス死誘導におけるC1^-チャネルの役割を調べた。アストロサイト由来のC6細胞を乳酸アシドーシス条件におくと持続性膨張を示し、やがてネクローシス死におちいった。この膨張時に容積を調節すべき容積感受性外交整流性(VSOR)C1^-チャネル活性が抑制されていることが明らかとなった。またピロリ菌毒素ペプチドVacAの投与によって外来性アニオンチャネルの導入を行う細胞容積が回復し、ネクローシス死もかなり救済された。以上より、乳酸アシドーシスによるネクローシス死の誘導にVSOR C1^-チャネル抑制が関与していることが結論された。第2に、上皮細胞アポトーシス誘導におけるC1^-チャネルの役割を調べた。ミトコンドリア仲介性刺激、死レセプター仲介性刺激のいずれによるアポトーシス誘導によっても、ヒト上皮HeLa細胞は、その初期に発生するアポトーシス性容積減少(AVD)に対応してVSOR C1^-チャネルの活性化を示すことが明らかとなった。ミトコンドリア仲介性刺激の場合には、その活性化シグナルは活性酸素種ROSであることも明らかにした。VSORブローカーやROSスカベンジャーによってAVDの発生を阻止すると、アポトーシス死も救済されることが明らかとなった。以上により、アポトーシス死の誘導にもVSOR C1^-チャネルが大きな役割を果たすことが結論された。第3に、ニューロンのグルタミン酸過興奮毒性におけるC1^-チャネルの役割を調べた。大脳皮質ニューロンをNMDAで過興奮刺激すると、細胞体膨張と樹状突起varicosity形成が見られた。このときVSORチャネルの活性化が見られた。これが持続するとネクローシス死におちいるが、VSORブロッカーで膨張及びvaricosity形成を抑制すると、ネクローシス死も著しく救済されることが明らかになった。以上により、ニューロンの過興奮毒性ネクローシス死誘導にVSOR C1^-チャネルが関与することが結論された。
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