研究課題/領域番号 |
14207005
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中村 敏一 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (00049397)
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研究分担者 |
松本 邦夫 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (90201780)
船越 洋 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (40273685)
水野 信哉 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (10219644)
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キーワード | HGF / 慢性臓器不全 / 抗線維化機構 / 筋線維芽細胞 / TGF-β / 細胞外マトリックス / 自己修復システム / 再生医学 |
研究概要 |
慢性的に進行する疾患では実質細胞の脱落とともに線維芽細胞は筋線維芽細胞に分化する。やがては細胞外基質が過剰に沈着した病態、即ち、間質線維症に陥る。私達はこれまでに肝硬変や肺線維症などにおいてHGFが上皮細胞の再生を駆動して間質線維化への移行を阻止することを明らかにして来たが、間質に対するHGFの直接的な機能にっいては不明であった。そこで本年度は肺線維症、肝硬変および拡張型心筋症の疾患モデル動物を用いて間質筋線維芽細胞におけるHGFの直接的な機能を解析した。 1)進行した肺線維症に対するHGFによる線維化解除と実質再生促進: 肝臓や腎臓と異なり、細胞増殖能に乏しい肺では慢性傷害・線維化後の再生は困難とされて来た。私達はブレオマイシンを投与した肺線維症のマウスでは間質筋線維芽細胞にHGF受容体であるc-Met/HGF受容体が発現することを見出した。この意義を明らかにすべくHGFを投与したところ、MMP-1/-9の発現上昇に一致して細胞外基質が減少する一方、筋線維芽細胞でのアポトーシスが亢進した。さらに肺実質細胞の再生とともに呼吸器機能が改善した。 2)HGFによる肝硬変および拡張型心筋症での間質線維症の解除と臓器機能改善 肝臓毒(DMN)の頻回投与により誘起したラット肝硬変モデルでは間質に過剰蓄積した筋線維芽細胞にMetの発現が認められた。拡張型心筋症を自然発症するTO-2ハムスターでも心筋間質の筋線維芽細胞はMet陽性を示した。そこで両モデルにHGFを投与したところ、間質筋線維芽細胞の増殖抑制・アポトーシス促進に一致して間質線維化領域は縮小した。HGFを投与した肝硬変ラットでは肝細胞の再生に一致して肝機能が著しく是正された。さらに拡張型心筋症ハムスターではHGF投与により左心室収縮能の改善が認められた。 以上の結果から、間質線維化解除、実質再生といった生物活性を合わせ持っHGFは進行した慢性臓器不全症の病態改善を実現する画期的な治療因子になることが期待される。
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