3年間の研究により以下の研究成果を得た。(1)Klotho蛋白が活性型ビタミンD合成の律速酵素である1α-hydroxylaseの発現を負に制御するネットワークの重要な構成要素であり、活性型ビタミンDの機能亢進が多彩な変異症状を引き起こす重要な要因となっている。(2)Klotho蛋白はステロイド-グルクロニダーゼ活性を有しており、生理活性ステロイドの新たな活性化機構、あるいはステロイドグルクロニドのKlothoとの結合、乖離によってKlothoの機能が制御される可能性がある。(3)KlothoはNa+/K+ATPaseと副甲状腺ホルモンを分泌する分泌顆粒で結合しており、Klothoノックアウトでは細胞外カルシウムの低下に伴う分泌顆粒の移動が起こらず、分泌応答が起こらないこと、またウアバインを投与してNa+/K+ATPaseを阻害すると分泌顆粒の移動が起こらず、分泌応答が起こらないことを確認した。(4)Klotho抗体による免疫沈降と質量分析解析によってKlotho蛋白がNa+/K+ATPaseと結合していることを確認した。脈絡膜におけるNa+/K+ATPaseの活性をルビジウム(Rb)の取り込みにより、また、Na+/K+ATPaseの細胞表面量をウアバインの結合量で測定したところ、野生型では細胞外カルシウム濃度の低下に従ってRbの取り込み活性とNa+/K+ATPaseの細胞表面量が増大するが、Klothoを欠失するとこの様な応答が起こらないことが明らかとなり、Klotho蛋白は細胞外の変化に素早く応答してNa+/K+ATPaseの細胞表面へのリクルートを制御していることを証明した。Klotho蛋白は膜貫通ドメイン及び、そのN端側で切断されて分泌されるが、Na+/K+ATPaseの細胞表面へのリクルートとKlotho蛋白の分泌が相関していた。関連分子の遺伝子をHeLa細胞に導入し、この制御システムを培養細胞系で再構成することに成功した。これらを総合して、例えば細胞外のカルシウム濃度が低下すると、その低下をセンサーチャンネルが感知し、シグナルをKlotho・Na+/K+ATPase複合体に伝え、Klotho蛋白の構造変化、Klotho蛋白の細胞内ドメインと結合する分子との解離、あるいはKlotho蛋白の切断が起こり、Na+/K+ATPaseが細胞表面へと移動し、機能を発揮すると推定している。
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