オオキネート、中腸オオシスト及び唾液腺から調整したスポロゾイトのEST解析を行い、データベースを構築した。オオキネート、スポロゾイトで発現される遺伝子の大部分を網羅することを目指して解析した。機能が同定できているOSM-1 (ookinete sporozoite microneme protein-1)について報告する。OSM-1 cDNAを用いて発現し、抗体を作製した。抗体によるWestern Blotを行ってOSM-1を検出したところ、中腸内のオオキネートと唾液腺に入った後のスポロゾイトの両ステージ特異的に発現することが判った。同じ抗体を用いて、免疫電顕を行って細胞内での分布を検討した結果、OSM-1はミクロネームという分泌オルガネラに局在することが判明した。 OSM-1の遺伝子をノックアウトした原虫を作製した。このOSM-1ノックアウト原虫(KO原虫)の表現形について様々な角度から検討した。KO原虫は、ハマダラカ中腸でのオオシスト形成が約300分の1になっていたが、唾液腺への侵入には影響を与えていなかった。KO原虫を感染した蚊の唾液腺からスポロゾイトを回収し、ネズミへの注射によって感染させたところ、感染効率が野生株原虫に比べて、約50分の1に落ちていた。このKO原虫スポロゾイトを用いin vitro系で培養肝細胞(HepG2)に感染させたところ、感染性に差はなかった。また、HeLa細胞への侵入・通過を調べたところ、500分の1以下になっていた。以上のことから、OSM-1はオオシスト形成と肝臓への感染に重大な機能を持つ分子であることが判ったが、その機構については、中腸細胞への侵入通過と肝細胞へ達する前の、類洞壁内皮細胞あるいはクッパー細胞への接着に関わるのではないかと考えて、現在検討を進めている。
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