研究概要 |
3年間の研究成果の概要は以下の通りである。マラリア原虫はハマダラカによって媒介され、蚊の体内では増殖と動物への感染性を獲得する。この間に,オオキネートの中腸細胞への侵入及びスポロゾイトの唾液腺細胞への侵入が,原虫にとってバリアーとなっている。また蚊の吸血によって動物体内に入った原虫スポロゾイトは肝臓細胞に感染寄生するが,個々に達するまでには、皮膚と肝臓の類洞壁がバリアーとなっている。これらのバリアーを如何に通過しているかがこの研究のターゲットであった。このため、モデル実験動物としてネズミマラリア原虫P.bergheiを用い、オオキネートおよびスポロゾイトのEST (expressed sequence tags)を解析し、一定の基準で選択した遺伝子をノックアウトした原虫を作製し、発現型の解析から、その遺伝子の機能の解析を行った。その結果、中腸細胞への侵入に必須の分子MAOP,唾液腺への侵入に必須のMAEBL,肝臓の類洞壁のクッパー細胞通過に必須の分子として、SPECT1,を同定した。またOSM1は中腸細胞内とクッパー細胞内の移動に関わる分子であることが判った。中腸細胞層と類洞壁は原虫にとって、感染寄生場所に達するまでのバリアーとなっており、これらを通過する機構が、違ったステージでありながら、共通する分子によっており、共通であることを示すことができた。またこの研究により、肝臓の類洞に達した原虫は類洞壁のクッパー細胞を通過して肝細胞に達して寄生することを初めて示した。
|