研究概要 |
B細胞特異的アダプターBASHは、Btk, PLCγ2, Vav, Grb2等と結合し、B細胞抗原受容体(BCR)刺激によるPLCγ2やNF-κB、MAPK等の活性化に必要である。BASH欠損マウスでは、成熟B細胞の著減、B細胞の活性化・増殖の欠如、抗体産生低下などの異常がみられた。また、BCRのreceptor editingが障害されていた。本年度は、in vitro抗体産生系により、抗DNA抗体を産生するB細胞の割合がBASH欠損マウスには増加していることが判り、receptor editingが自己反応性B細胞の制限に貢献していることが証明された。 B細胞初期分化が抑制されているBASH欠損マウス、およびCD19との二重変異マウスに発症したプレB細胞白血病を株化した(それぞれBKO, DKO)。これらはpreBCR陽性で、RAG2を発現しているが、κ鎖遺伝子は未再構成型であった。この細胞を用いて、κ鎖再構成を誘導するシグナル経路を解明しつつある。まず、PMA処理によりκ鎖germline転写が増加し、κ鎖再構成が誘導されることが判った。同時に、preBCRの細胞表面での発現が低下した。また、レトロウィルスベクターを用いてBASHの発現を回復させると、PMA刺激と同様にこれらの変化が起こった。したがって、preBCRからのBASHを介する恒常的なシグナルによりκ鎖再構成とpreBCR発現低下が誘導されることが明らかになった。さらに、これらの変化はPKC抑制剤により抑制されたので、このシグナルはPKCの活性化を介するものと考えられた。今後、このシグナル経路の全容を解明したい。 新規に同定したBASH(N末端)結合蛋白BNAS1,BNAS2は両者とも4回膜貫通蛋白と予想され、核膜周囲および細胞質内の一部分に局在すること、それぞれERKの活性化を抑制および増強することが判った。
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