研究概要 |
本研究では薬剤耐性HIVに効力を発揮する逆転写酵素阻害剤(RTIs)とプロテアーゼ阻害剤(PIs)の開発と耐性発現機序解明の研究、既存の薬剤と異なる作用点を持つ抗HIV剤の開発を目的にCCR5阻害剤の開発・研究を行った。 RTIsについては多剤耐性に関連するアミノ酸変異(HIV-1_<Q151L>)の出現機序解析を進め、これまで同定した複数のRTIsの阻害機構を酵素学的に検討した。PIsについては複数の新規PIsを同定、中でもbis-THFというユニークな構造を有し、多剤耐性株を含む多くのHIV-1株に活性を発揮するUIC94003の研究(Yoshimura & Mitsuya,J.Virol.76:1349-58,2002)、更に薬物動態を改善させた誘導体:UIC94017/TMC114を同定(Koh & Mitsuya,AAC.47:3123-29,2003)を進め、UIC94017は現在ヨーロッパで臨床試験(Phase II)が進行中である。更にPIに対する耐性獲得にHIVの構造蛋白のアミノ酸変異が与える影響について詳細に検討した(Gatanaga & Mitsuya,JBC.277:5952-61,2002)。ケモカインレセプターについてはCCR5とケモカイン(LD78β)の構造学的解析といった基礎的研究を進めると共に(Miyakawa & Mitsuya,JBC.277:4649-55,2002)抗HIV活性・薬理動態に優れたCCR5阻害剤であるAK602/ONO4128を見出した。AK602は既存の抗HIV剤と交差耐性を認めずhuPBL-NOD-SCIDマウスの系で強力な活性を示した.更にケモカインの作用にはわずかしか影響を与えず抗HIV活性を示すことを明らかにした。AK602は米国で臨床第2相試験が開始されている。
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