2002 年度実績報告書

神経変性疾患における細胞死の分子メカニズム

研究課題

研究課題/領域番号	14207032
研究機関	特殊法人理化学研究所
研究代表者	高橋良輔理化学研究所, 運動系神経変性研究チーム, チームリーダー (90216771)
研究分担者	今居譲理化学研究所, 運動系神経変性研究チーム, 基礎科学特別研究員 (30321730) 鈴木泰行理化学研究所, 運動系神経変性研究チーム, 基礎科学特別研究員 (40321773)
キーワード	パーキンソン病 / Parkin / AR-JP / パエル受容体 / 小胞体ストレス / ERAD / CHIP / Hsp70
研究概要	常染色体劣性遺伝性パーキンソン病(AR-PD)の病因遺伝子産物、パーキンはユビキチンプロテアソーム系において、分解される基質を特異的に認職し、そのユビキチン化を促進するRINGフィンガー型のユビキチンリガーゼである。我々はパーキンの基質たんぱく質としてリガンド未同定のG蛋白共役型受容体、パエル受容体を同定した。パエル受容体は小胞体での折れたたみが難しいたんぱく質であり、折れたたみに失敗した場合、パーキンの働きで小胞体関連分解(ERAD)によって分解される。培養細胞で過剰発現したパエル受容体の分解を阻害すると、パエル受容体は小胞体に異常蓄積し、小胞体ストレスの結果、細胞死を引き起こす。またAR-PD患者脳でも不溶性のパエル受容体が非患者脳の10-30倍以上も蓄積していた。発現分布を検討した結果、パエル受容体は中枢神経では、オリゴデンドロサイトと黒質ドーパミンニューロンに発現し、他のニューロンでの発現は乏しかった。以上の事実から、折れたたみ不全パエル受容体の蓄積による小胞体ストレスがAR-PDの発症の本態と考えられる。さらに我々はパーキン結合たんぱく質としてHsp70とCHIPを同定した。CHIPはパーキンによるパエル受容体のインビトロでのユビキチン化を促進する作用があることがわかった。Hsp70にはパエル受容体の凝集・不溶化を防ぐ作用が認められた。またパエル受容体の過剰発現による細胞死はパーキン単独に比べパーキン、CHIP、Hsp70の共発現によって著しく抑制された。さらに小胞体ストレスの経過中にHsp70は急速に、CHIPとパーキンは緩やかに発現が上昇した。以上より、小胞体ストレス下ではHsp70が増加して折れたたみ不全パエル受容体の凝集・不溶化を防ぎ、次にパーキンとCHIPが動員されて分解するという巧妙な役割分担で効率的にパエル受容体の処理が行われていると考えられる。

研究成果

(6件)

すべてその他

すべて文献書誌 (6件)

[文献書誌] Araya, R., Takahashi, R.他: "Yeast two-hybrid screening using consttitutive-active caspase-7 as bait in the identification of PA28 γ as an effector caspase substrate."Cell Death Differ.. 9. 322-328 (2002)
[文献書誌] Imai, Y., Takahashi, R.他: "CHIP is associated with Parkin, a gene responsible for familial Parkinson's disease, and enhances its ubiquitin ligase activity."Mol.Cell. 10. 55-67 (2002)
[文献書誌] Kobayashi, S., Takahashi, R.他: "Calpain-mediated X-linked inhibitor of apoptosis degradation in neutrophil apoptosis and its impairment in chronic neutrophilic leukemia."J.Biol.Chem. 277. 33968-33977 (2002)
[文献書誌] Urushitani, U., Takahashi, R.他: "Proteasomal inhibition by misfolded mutant superoxide dismutase 1 induces selective motor neuron death in familial amyotrophic Iateral sclerosis."J.Neurochem. 83. 1030-1042 (2002)
[文献書誌] Takahashi, R., ImaI, Y.他: "Parkin and ER stress"Ann.N.Y.Acad.Sci.. (印刷中). (2003)
[文献書誌] 高橋良輔: "パーキンの機能"生化学. 74. 471-476 (2002)

2002 年度 実績報告書

神経変性疾患における細胞死の分子メカニズム

研究代表者

高橋 良輔 理化学研究所, 運動系神経変性研究チーム, チームリーダー (90216771)

研究成果

[文献書誌] Araya, R., Takahashi, R.他: "Yeast two-hybrid screening using consttitutive-active caspase-7 as bait in the identification of PA28 γ as an effector caspase substrate."Cell Death Differ.. 9. 322-328 (2002)

[文献書誌] Imai, Y., Takahashi, R.他: "CHIP is associated with Parkin, a gene responsible for familial Parkinson's disease, and enhances its ubiquitin ligase activity."Mol.Cell. 10. 55-67 (2002)

[文献書誌] Kobayashi, S., Takahashi, R.他: "Calpain-mediated X-linked inhibitor of apoptosis degradation in neutrophil apoptosis and its impairment in chronic neutrophilic leukemia."J.Biol.Chem. 277. 33968-33977 (2002)

[文献書誌] Urushitani, U., Takahashi, R.他: "Proteasomal inhibition by misfolded mutant superoxide dismutase 1 induces selective motor neuron death in familial amyotrophic Iateral sclerosis."J.Neurochem. 83. 1030-1042 (2002)

[文献書誌] Takahashi, R., ImaI, Y.他: "Parkin and ER stress"Ann.N.Y.Acad.Sci.. (印刷中). (2003)

[文献書誌] 高橋 良輔: "パーキンの機能"生化学. 74. 471-476 (2002)

2002 年度実績報告書

高橋良輔理化学研究所, 運動系神経変性研究チーム, チームリーダー (90216771)

[文献書誌] 高橋良輔: "パーキンの機能"生化学. 74. 471-476 (2002)