研究課題/領域番号 |
14207037
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
牛島 廣治 東京大学, 大学院・医学研究科, 教授 (10091068)
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研究分担者 |
西尾 治 国立感染症研究所, 感染症情報センター・第六室, 室長(研究職) (40270631)
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キーワード | 日本 / 診断法 / イムノクロマト法 / 分子疫学 / multiplex PCR / ノロウイルス / ロタウイルス / 食中毒 |
研究概要 |
下痢症ウイルスの診断法の開発として次のことを行つた。(1)一昨年、世界で初めて開発したノロウイルスのイムノクロマト法は、現在流行しているGII/4を特異的に検出した。今後全てのノロウイルス株を検出するため、4つのGI株、11のGII株に対し中空ウイルスを作成した。ポリクローナルおよびモノクローナル抗体を作成し、これらを使って新しいイムノクロマト法を開発中である。(2>すでに2種類のmultiplex PCR法を下痢症ウイルス検出のために確立し、ロタウイルスA、B、C群、アデノウイルス、ノロウイルスGI、GII、アストロウイルス、サポウイルスが検出可能である。さらに、エンテロウイルス、A・E型肝炎ウイルス、インフルエンザウイルスを糞便中から検出する方法を開発した。(3)リアルタイムPCRを用いて環境水のノロウイルス検出を可能とした。 分子疫学として、(1)平成15-16年のわが国5地区でのmultiplex PCRによるロタウイルス、アデノウイルス、アストロウイルス、ノロウイルス、サポウイルスの検出率は、それぞれ35%、7%、5%、30%、5%であった。この結果よりノロウイルスの一般小児科での検出率が判明した。(2)ロタウイルスはG1が10%で、G2、G3、G4、G9がそれぞれ約20%であった。昨年度報告したようにG1は1980年に約20%であったが次第に多くなり1990年代には80-90%となり、その後2000年ぐらいから減少し10%までなった。G2型は時に20-30%になるも、多くは10%前後であった。G9の中でゆlineage3に属する株がほとんどで、これは世界的な傾向であった。アデノウイルスは4l血清型が多かった。ノロウイルスはほとんどがGII/4の型であった。アストロウイルスは1型であった。今年、わが国で高齢者施設内でのノロウイルスによる死亡が見られ社会的問題となった。我々は、昨年度、高齢者施設および病院内で食品と関係しないノロウイルスの流行を見た。本年においてもA病院で大きなノロウイルスの施設内流行が見られた。これらはノロウィルスGII/4によるものであった。このように食品を介さないノロウイルスの流行が見られるが、子どもにおけるノロウイルスの散発感染がなぜ初冬なのかは、依然としてはっきりしない。 環境中、特にトイレ、食堂などで壁、便器などに付着するウイルスを光触媒(酸化チタン)で不活化するための基礎実験を続けた。ロタウイルスに対し50-100分の1ほど活性ウイルスを減らすことがわかった。蛋白に対する影響(傷つける)であり、遺伝子にはあまり影響しないことがわかった。全国の衛生研究所の協力により、各地での生カキおよび海水中のウイルスを検査した。ノロウィルスは12-1月に貝や海水中に多かった。食中毒の事例が減っているのは、検査法が確立したこと、食品、従事者の自主検査により安全が確保されてきたことによる。
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