研究概要 |
本基盤研究の最終年度においては、今までの研究代表者の須田年生が、平成16年度から特別推進研究に移行したため、尾池雄一が代表者となり、血管新生研究を中心に続行した。アンジオポエチン(Ang)およびアンジオポエチン様分子(Angptl)の生理機能の解析を進め、以下のことを明らかにした。 1)我々がマウス及びヒトでクローニングし報告したオーファンリガンドであるアンジオポエチン様分子のうちAngptl1とAngptl2のゼブラフィッシュホモログをクローニングし、その発現及び血管内皮細胞において抗アポトーシス作用を有することを示した。両者の間に協調作用があることがモルフォリーノの結果から分かり、血管新生因子のネットワークが示唆された。 2)我々が血管新生因子として報告したオーファンリガンドであるAGF/Angptl6がエネルギー代謝調節、糖代謝調節にも重要な役割を果たしていることが、ノックアウトマウス、トランスジェニックマウスの解析結果から明らかにされた。これは、全く予期しない発見ではあったが、血管新生とエネルギー代謝の連関という新しい領域を切り開く結果となった(Oike et al, Nature Medicine, in press) 3)血管新生、血管の安定化に重要なTIE2受容体がリンパ管内皮細胞にも発現していて、アンジオポエチンシグナルがリンパ管内皮細胞の生存、遊走を制御していることをフィンランドAlitalo教授らとの共同研究で明らかにした。 また、研究分担者の平尾らは、Ataxia telangiectasia mutated(ATM)遺伝子欠損マウスにおいて造血幹細胞の機能低下を見いだした。このマウスでは、幹細胞の自己複製能の低下が見られた(Ito et al, Nature 2004)。アンジオポエチンなどによって、ニッチに誘導される幹細胞が、酸素毒などのストレスからいかに守られているかについて考察した。
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