研究概要 |
本基盤研究の最終年度においては、今までの研究代表者の須田年生が、平成16年度から特別推進研究に移行したため、尾池雄一が代表者となり、血管新生研究を中心に続行した。アンジオポエチン(Ang)およびアンジオポエチン様分子(Angptl)の生理機能の解析を進め、以下のことを明らかにした。 1)我々がマウス及びヒトでクローニングし報告したオーファンリガンドであるアンジオポエチン様分子のうちAngptl1とAngptl2のゼブラフィッシュホモログをクローニングし、その発現及び血管内皮細胞において抗アポトーシス作用を有することを示した。両者の間に協調作用があることがモルフォリーノの結果から分かり、血管新生因子のネットワークが示唆された。 2)我々が血管新生因子として報告したオーファンリガンドであるAGF/Angptl6がエネルギー代謝調節、糖代謝調節にも重要な役割を果たしていることが、ノックアウトマウス、トランスジェニックマウスの解析結果から明らかにされた。これは、全く予期しない発見ではあったが、血管新生とエネルギー代謝の連関という新しい領域を切り開く結果となった(Oike Y. et al. Nature Medicine,2005) 3)成体骨髄における造血幹細胞ニッチの同定 静止期造血幹細胞(KSL-SP細胞)の70-80%は、TIE2陽性であることを見出し、我々は成体骨髄における造血幹細胞の存在位置を検討した。その結果、骨髄組織の免疫染色により、幹細胞は骨芽細胞の近く、あるいは、それに接して存在することを明らかにした。さらに、アンジオポエチン-1は、TIE2受容体を介して幹細胞がニッチと接着するのを誘導することを示した(Arai F. et al. Cell,2004)。 4)成体骨髄における造血幹細胞と血管内皮細胞の関係 我々は、胎生期と同じように造血幹細胞と血管内皮細胞に分化するHemangioblastが、成体骨髄において存在するかいなかを検討した。その結果、i)造血幹細胞、ii)血管内皮前駆細胞、さらにiii)造血幹細胞と血管平滑筋細胞には分化するが、内皮細胞には分化しない細胞集団の純化に成功した。しかしながら、Hemangioblastをクローナルに証明することはできなかった。
|