研究課題/領域番号 |
14207052
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 国立循環器病センター(研究所) |
研究代表者 |
巽 英介 国立循環器病センター研究所, 人工臓器部, 室長 (00216996)
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研究分担者 |
西中 知博 国立循環器病センター研究所, 人工臓器部, 室長 (00256570)
武輪 能明 国立循環器病センター研究所, 人工臓器部, 室長 (20332405)
妙中 義之 国立循環器病センター研究所, 人工臓器部, 部長 (00142183)
築谷 朋典 国立循環器病センター研究所, 人工臓器部, 室員 (00311449)
本間 章彦 国立循環器病センター研究所, 人工臓器部, 室員 (20287428)
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キーワード | 経皮的心肺補助(PCPS) / 補助人工心臓(VAD) / 遺伝子治療 / 重症心不全 / 心臓移植 / 肝細胞増殖因子(HGF) / ヘパリン化表面処理 / 抗凝血療法 |
研究概要 |
本研究の目的は、次世代型循環補助装置と遺伝子治療を用いた新しい心疾患治療戦略の確立であり、具体的研究項目は、1)心不全急性期の生命維持のための次世代型経皮心肺補助(PCPS)装置の開発、2)補助人工心臓システムの高QOLでの長期使用を可能とするための抜本的改良、3)心移植ドナー不足に対応するための補助循環下HGF遺伝子治療による心機能回復手法の確立、である。本年度は次世代型PCPS装置の開発を進めた。まず、血漿漏出のない特殊ガス交換膜使用人工肺(当研究グループで開発し、単体は既に製品化)および軸シール構造のない高耐久性遠心ポンプを含めたPCPSシステムの基本構築を行った。次に、別に開発を進めてきた強力かつ高耐久性の新規ヘパリン化表面処理(T-NCVCコーティング)を、回路の全血液接触面に施した。この回路を用いて体重41〜65kgの成山羊17頭に対して大静脈脱血、頚動脈送血のV-AバイパスPCPSを施行し、ヘパリンなど抗凝血薬の投与を一切行なわずに連続灌流した。実験期間は34-150日間で、41日目に心タンポナーデを示した1例を除いて全て待機的に実験を終了した。人工肺からの血漿漏出は認めず、バイパス流量、ガス交換性能も安定して維持された。ACT、APTTは正常範囲で、血中ヘパリン濃度は常に測定感度以下であった。血小板数や他の凝固系パラメータも安定していた。剖検ではPCPS回路に起因する塞栓症を示唆する所見は全くみられなかった。人工肺の観察では、流入出ポート周辺部に軽度な血栓形成を認めものの中空糸束には血栓を認めず、細胞成分の付着もみられなかった。優れた抗血栓性と耐久性を有する本システムは、抗凝血療核非施行下での長期連続使用が可能で、心不全急性期の生命維持のみならず、外傷や出血性疾患の一次救命、重症呼吸不全の治療、移植へのブリッジなど種々の病態にPCPSの適用を拡大し得ると考えられる。
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