研究概要 |
心肺停止,頭部外傷,くも膜下出血等の急性中枢神経障害の病態を従来の神経細胞死のメカニズム(Ca^<++>の細胞内蓄積,グルタミン酸受容体の関与,ラジカル等)以外に免疫・内分泌反応が関与するとの発想の転換により,急性期中枢神経障害の病態を解明し,その軽減を本研究の目的とする. (臨床研究)昨年度までに確立した測定法(1)サイトカイン(TNFα,IFNγ,IL-1β,IL-2,IL-4,IL-6,IL-8,IL-10)(2)NO酸化物(NO2-,NO3-),(3)カテコールアミン,(4)アミノ酸(グルタミン酸,アスパラギン酸,アルギニン,シトルリン)(5)ニューロン特異性エノラーゼに加えてフリーラジカル関連の80HdGの測定法を確立した.また,臨床のサンプルでこれらの項目の測定を開始し,1.心肺停止・蘇生後患者の12例の脳脊髄液(CSF)中のIL-6とIL-8が神経学的予後不良群で上昇することを認め,学会発表し論文作成中である. 2.くも膜下出血クリッピング術後患者12例のCSFで炎症性サイトカイン(TNFα,IL6,IL8)を測定し,これらが著明に上昇していたが,抗炎症性サイトカイン(IL-4,IL-10)の上昇は軽度であった. 3.くも膜下出血クリッピング術後患者15例のCSFで80HdGを経日的に測定したが,文献的な正常範囲内の値を示した. 4.くも膜下出血13例,脳内出血10例,脳梗塞4例の合計27例で超急性期の心筋機能障害と血中カテコラミンの関連を検討し,重症例では心筋障害を認め,エピネフリンとノルエピネフリンの上昇傾向があった.心筋傷害の有無により死亡率に有意差を認めたが,ドパミン,トロポニンT, CK-MB, BNPには有意差がなかった. 5.頭部外傷患者4例のCSFでIL-6を測定し,著明に上昇することが判明した. (基礎研究)新生仔ラットミクログリアのプライマリーカルチャーで,内毒素刺激によりNO_2+NO_3(NOx)と炎症性サイトカイン(TNFα,IL-1β,IL-6)は著明に上昇する.免疫抑制作用を有するメチルプレドニゾロンは,上記のNOxおよび炎症性サイトカインの上昇を抑制した.サイクロスポリンはNOxの抑制効果はなく,炎症性サイトカインのうちIL-6のみを一時的に抑制した.タクロリムスはNOx, TNFα,IL-6を抑制したが,IL-1βは抑制しなかった.これらの薬剤は内毒素刺激後投与でもフリーラジカルや炎症性サイトカインを抑制できたので動物実験を経て臨床応用ができる可能性がある.
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