研究概要 |
前立腺癌には前立腺特異抗原(PSA)という有用な腫瘍マーカーがあるが、治療を必要としない早期癌も検出してしまうことなどから、このような弱点を補完する新しいマーカーが求められている。本研究は、このキープレーヤーとなる遺伝子を我々の確立したラット前立腺癌モデルや臨床検体を用いて同定し、前立腺癌の診断のみならず遺伝子治療の基礎を築くことを目的とする。 同意の得られている前立腺癌摘除標本から、凍結ミクロトームを用いて凍結標本を作製し、LCM装置により微量な組織を採取した。本手法により遺伝子診断に用いるための良質な核酸を抽出することが可能となった。このDNAを用いて、まず染色体CGH解析により、全染色体について欠失および増幅している領域を解析した。その結果、1p,1q,6p,7q,11q,12q,15q,16q,17p,17q,20qに染色体の増幅、2q,4q,5p,5q,6p,6q,8p,9q,13q,18qに染色体の欠失が高頻度にみられた。また生化学的再発の有無との関連性をみたところ、8pの欠失を認めた症例では、術後早期に再発する傾向がみられた。この領域はラット前立腺癌モデルを用いて同定した領域とも一致していた。この8pについてさらにarray CGH解析により特定の領域との関連性を詳細に解析した。これらの成果は現在投稿準備中である。2番染色体についてもPCR-LOH法により前立腺癌の進展と染色体欠失の有無について解析を行った。その結果、2p16.3,2p12-cen,2q21.3,2q23.1-32.1が癌の進展と関連した共通欠失領域であることがわかり、論文として報告した。これは染色体CGHの結果とも一致していた。 以上の研究成果を臨床に応用するため、臨床症例そのもののまとめや解析も行い論文として報告した。
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