研究概要 |
前立腺癌には前立腺特異抗原(PSA)という有用な腫瘍マーカーがあるが、これを補完するものやキープレーヤー遺伝子が探索されている。本研究は、これらの遺伝子を同定し、前立腺癌の診断のみならず遺伝子治療の基礎を築くことを目的とする。 ラット前立腺癌モデルを用いてヒト13番染色体に転移抑制遺伝子が存在することを示した。また10番染色体による転移抑制の機序を示した。8p21-12からラット前立腺癌の転移を抑制する60kbの領域をクローニングしたが、この遺伝子は蛋白をコードしていない可能性が高く、新しい展開を示唆する結果が得られた。 前立腺癌摘除標本から、LCM装置を用いて微量な組織を採取し、抽出したDNAを用いてCGH解析を行い、欠失および増幅している領域を解析した。2q,4q,6q,8p,13q,16q,18qに欠失が高頻度にみられた。これらの異常のうち8pと13qの欠失はpT2よりもpT3において頻度が高かった。また、13qの欠失を認めた症例において病理学的悪性度が高く、6qの欠失を認めたもので生化学的再発までの期間が短かった。これらの領域は、PCR-LOH法により同定されていた領域とほぼ一致しており、LCM装置とCGH解析を用いた診断法が臨床的に有用であることを示した。 すでに抽出してあった前立腺癌組織のDNAについてもPCR-LOH解析を行い、12p13-12については転移巣において約25%にLOHを認め、欧米とほぼ同様の傾向であることを示した。2番染色体については2p16.3,2p12-cen,2q21.3,2q23.1-32.1が癌の進展と関連した共通欠失領域であることを示した。 その他、アンドロゲン受容体遺伝子に関する解析や、臨床症例のまとめや解析も行い、遺伝子解析によって得られた結果を新しい治療法の確立に応用していく道筋もつけることができた。
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