研究課題/領域番号 |
14207062
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小川 修 京都大学, 医学研究科, 教授 (90260611)
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研究分担者 |
福島 雅典 京都大学, 医学研究科, 教授 (80107820)
西山 博之 京都大学, 医学研究科, 助手 (20324642)
伊藤 啓之 京都大学, 医学研究科, 助手 (70343225)
大島 伸一 名古屋大学, 医学研究科, 教授 (80293702)
内藤 誠二 九州大学, 医学研究院, 教授 (40164107)
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キーワード | 膀胱癌 / 網羅的発現解析 / オーダーメイド医療 / 化学療法 / 治療反応性 / アウトカム研究 |
研究概要 |
[背景]近年の分子生物学の急速な発展に伴って、発癌や悪性進展の分子機構は徐々に明らかになっているが、実際の癌治療において有用と考えられる遺伝子(分子)マーカーは数少ない。特に侵襲性の高い化学療法や放射線療法などの治療反応性を予測する分子診断システムは、患者の生命予後のみならず生活の質の改善にも大きく寄与すると思われる。[目的]本年度においては化学療法に感受性を示す膀胱癌を対象に、今後のプロスペクティブな臨床研究の基盤を確立するとともに、一方では網羅的発現解析における基礎的技術の洗練作業を行うことを目的とした。[方法]年間の膀胱全摘症例数が10を超える32の施設から過去10年分の症例カードを回収しアウトカム研究を行った。また、ニュージーランド・オタゴ大学に研究員を派遣し、約3万のオリゴプローベを乗せたチップを用いた網羅的発現解析の基礎技術を共同で行うとともに、化学療法反応性と遺伝子発現の相関を検証する前向き試験を計画した。[結果]アウトカム研究においては、総計1131名の浸潤性膀胱癌を集計した。その結果、本邦における浸潤性膀胱癌の膀胱全摘術後5年生存率は68%であり(pT2以下では78.7%、pT3以上では46.3%)、予後に影響を与える因子としては年令、臨床病期、病理学的病期、リンパ節転移とリンパ節郭清の有無が明かとなった。本解析は本邦における最大のアウトカム解析であり、今後の浸潤性膀胱癌における治療成績の基準を示した報告となった(Eur.Urol.,45:176-181,2004)。網羅的発現解析は約100の膀胱癌臨床検体を利用して基礎的データの収集を完了した。また、前向き試験は京都大学倫理委員会を通過し、3つの大学病院で開始された。[考察と今後の方向性]膀胱癌は施設間における治療成績に大きな解離の無い疾患であり、今後の多施設プロスペクティブ研究は高い信頼性を持って展開できると確認された。また、化学療法の反応性が予測可能であればオーダーメイド的な医療が展開できる可能性があり、網羅的発現解析によってこれを実現すべく研究を継続させる予定である。
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