研究分担者 |
矢野 哲 東京大学, 医学部附属病院, 助教授 (90251264)
藤井 知行 東京大学, 医学部附属病院, 助教授 (40209010)
久具 宏司 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (30322051)
百枝 幹雄 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (50221627)
大須賀 穣 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (80260496)
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研究概要 |
【目的】Adiponectin(Ad)は、抗血管新生、抗糖尿病、抗動脈硬化、抗炎症作用を持つ重要なサイトカインである。血清Ad濃度の低下が子宮内膜症や子宮内膜癌の患者で報告されており、Adが子宮内膜においても何らかの役割を果たしていると考えられる。そこで、子宮内膜におけるadiponectin receptor(AdipoR1,R2)の発現とその作用についての検討を行った。 【方法】同意の下、良性婦人科疾患のために子宮全摘術を受けた患者の子宮より子宮内膜を採取し、RT-PCR法、in situ hybridization(ISH)法にてAd及びAdipoR1,R2の発現を調べた。次に、AdipoR1,R2の機能を調べるために、子宮内膜間質細胞(ESC)培養系を用いて、Adの添加によるAMPKのリン酸化をWestern blot法にて確認した。さらに、Adの添加により、interleukin(IL)-1βでESCに誘導される炎症性サイトカイン(IL-6,IL-8,monocyte chemoattractant protein(MCP)-1)分泌が変化するかをELISA法にて評価した。 【成績】RT-PCR法、ISH法より、子宮内膜にAd及びAdipoR1,R2が発現しており、このAdipoR1,R2の発現はともに着床期にあたる分泌期中期で亢進していた。また、Adは10〜50μg/mlにおいて用量依存性にESCにおけるAMPキナーゼ(AMPK)のリン酸化を惹起し、50μg/mlで対照の6.3倍であった。Adの投与はIL-1β刺激によるESCからの炎症性サイトカイン(IL6,IL-8,MCP-1)の分泌を各々55%,49%,57%に低下させた。 【結論】Adが子宮内膜においてAdipoR1,R2を介してAMPKのリン酸化によるエネルギー維持作用や抗炎症作用を発揮することが示唆された。また、Adは子宮内膜関連疾患に関与する以外に、着床期において生殖生理に関与していることが推測された。
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