研究概要 |
環境酸素濃度の変化と種々のサイトカインによる角膜上皮細胞や実質細胞への影響を検討した。 1)酸素濃度の角膜上皮および実質細胞の増殖に与える影響 角膜上皮細胞および実質細胞を単層培養し,異なる酸素濃度(1%,21%および60%)の環境で培養し,経時的に細胞数を計測した。角膜上皮細胞は,1%および21%酸素濃度において,細胞増殖が認められたが,60%酸素では細胞増殖が抑制されていた。角膜実質細胞は,21%酸素濃度に比べ1%および60%酸素での培養で細胞増殖が抑制されていた。 2)酸素濃度変化によりリン酸化される蛋白質の同定 角膜上皮細胞を異なる酸素濃度で培養し,経時的に細胞溶解液より蛋白を抽出し,Western Blotting法によりリン酸化蛋白を検出しLS-MAS/MASでユビキチン活性化酵素,熱ショック蛋白質70など複数の蛋白質を候補蛋白質として同定した。 3)炎症性サイトカインによる角膜実質細胞ギャップ結合への影響 培養した角膜実質細胞は,互いにconnexin43などの構成タンパクからなるギャップ結合を介して色素移動を行っている。炎症性サイトカインであるTNFαによりギャップ結合の機能が抑制されることを明らかにした。 4)サイトカインによる角膜上皮細胞の増殖および細胞死への影響 HGF, IGFs, EGFは細胞増殖を促進すると共にアポトーシスを抑制した。TGFβは細胞増殖を抑制するがアポトーシスには影響せず,PDGFはどちらにも影響しなかった。 以上の研究成果から,角膜を構成する上皮細胞と実質細胞は酸素に対して異なる反応を示すことが明らかとなった。サイトカインが上皮細胞と実質細胞に異なる作用を示すことが明らかとなった。これらの研究成果は,今後角膜上皮および実質細胞を共培養して角膜上皮-実質複合体をIn Vitroで形成するための基本的な情報を提供する。
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