研究概要 |
昨年度に引き続き根尖孔外バイオフィルム形成細菌を16s rRNA遺伝子解析法により検索した.新たに供試した難治性根尖性歯周炎患者から得られた7試料の根尖孔外バイオフィルムと,昨年度の7試料をあわせ、計14試料より,1,207クローンを解析し、113細菌種が同定された.Fusobacteriumnucleatumは全試料から検出され,12試料からPorphyromonas gingivalisが,8試料からTannerellaforsythensis,7試料からPrevotella intermediaが検出された。Uncultured bacteriumは,11試料より検出された。これらの結果から,F.nucleatum, P.gingivalisやT.forsythensisといった辺縁性歯周疾患の病原性細菌種や,培養不可能な細菌が根尖孔外バイオフィルムを形成していることが明らかとなった。 昨年度クローニングしたP.gingivalisのバイオフィルム形成に関与する遺伝子(gtfA)を用いてgtfA遺伝子欠損株を作成し,野性株と欠損株を超微形態学的に検索した.両菌株間で,莢膜構造には形態学的相違はみられなかったが,欠損株において線毛の欠損が観察され,gtfA遺伝子が同菌の病原因子の1つである線毛の発現に関与していることを明らかにした.現在,gtfAに対する特異抗血清を作製し,免疫電顕法によりgtfA遺伝子の発現部位を検索中である. 一方,Modified Robbins Deviceにて作製したP.gingivalisバイオフィルムに対する,3種類の抗菌剤の抗菌効果をATP測定法により検討した.グルコン酸クロルヘキシジン,ミノサイクリン塩酸塩,メトロニダゾールのうち,クロルヘキシジン作用時は1日後にATP量が約1/1,000まで減少し,7日目まで持続的に減少した.ミノサイクリンとメトロニダゾールのATP量は,7日後で約1/2であった.これらより,浮遊系のP.gingivalisには抗菌効果を有するミノサイクリンやメトロニダゾールが,P.gingivalisバイオフィルムに対しては著明な抗菌効果を発揮しないことを明らかにした.
|