研究概要 |
難治性根尖性歯周疾患に関与する根尖孔外バイオフィルム細菌を遺伝子解析法により同定し,Fusobacterium nucleatum, Porphyromonas gingivalisやTannellera forsythensisを高頻度で検出し,辺縁性歯周炎の病原性細菌とされている細菌種のいくつかが、難治性根尖性歯周炎にも密接に関与していることを明らかにした。そして,これら3細菌種の局在性を免疫組織化学的に検索した結果、P.gingivalisはセメント質に近接した部位からバイオフィルム表層にかけ散在性に,F.nucleatumはバイオフィルムの中層から表層にかけ,T.forsythensisはバイオフィルムの最表層部で検出され,個々の細菌種がそれぞれ特定の局在傾向を示すことを見いだした. 一方,根尖孔外バイオフィルムから同定された細菌種のバイオフイルムに対する抑制法をin vitroにて検討した.Modified Robbins Deviceにて作製したP.gingivalisバイオフィルムに対しグルコン酸クロルヘキシジンはある程度の抗菌効果を有するが,浮遊系のP.gingivalisに著効を示すミノサイクリンやメトロニダゾールはバイオフィルムには抗菌効果を示さないことを明らかにした.また,各種の単一細菌バイオフィルムに対し,Er:YAGレーザーは,形成する細菌種によりその抑制効果が異なることが分かった. 続いて,同定結果を基に,P.gingivalisのバイオフィルム形成に関与するglycosyltransferaseをコードする遺伝子のクローニングおよびその役割解析を行った。11個のORFを同定し,その1つ(gtfA)は248のアミノ酸からなりN末端にglycosyltransferaseのドメインを有していることを見いだした。さらにgtfA遺伝子欠損株を作製した後、野生型P.gingivalis 381株と比較検討したところ,gtfA欠損株においては自己凝集能の低下がみられ,gtfAはP.gingivalisの自己凝集に必須の遺伝子であることを明らかにした。 他方で,根尖孔外バイオフィルム形成の足場となるガッタパーチャポイントに対する単一細菌種によるバイオフィルム形成能を検索し,50%以上の血清添加培地においてEeterococcus faecalisやStreptococcus sanguisなどのグラム陽性細菌が強いバイオフィルム形成能を有していること,供試したグラム陰性細菌種はガッタパーチャポイントに対し単一細菌種ではバイオフィルムを形成しないことを明らかにした.
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