研究概要 |
初年度(平成14年度)は、口腔癌に対してOK-432,UFT及び放射線同時併用療法が非常に有効であり、その効果は、Toll-like receptor 4(TLR4)シグナルに依存している事、さらにOK-432より分離した活性成分リポタイコ酸関連分子(OK-PSA)がTLR4を介して担癌マウスにおいて強い抗腫瘍免疫活性を発現する事を明らかにした。本年後は、OK-PSAをPoly(lactide-co-glycolide(PLG)microparticlesに封入し(PLG-OK-PSAと略す)、PLG-OK-PSAの抗腫瘍免疫活性につき動物実験系にて検索した。ヒト口腔癌細胞を移植したヌードマウス腫瘍系および同系扁平上皮癌細胞を移植した同系マウス腫瘍系において、OK-PSA腫瘍内投与により有意な腫瘍増殖抑制効果を認めたが、PLG-OK-PSAはさらに強い抗腫瘍効果を示した。この時マウス血清中にIFN-γ,TNF-α,IL-12,IL-18,NOの産生が認められた。さらに、腫瘍浸潤リンパ球、リンパ節細胞および脾細胞の癌細胞障害活性の増強も認められた。OK-PSAおよびPLG-OK-PSAは、同系マウス腫瘍系において癌抗原特異的細胞障害性T細胞を誘導し、ヌードマウス腫瘍系に比較してより強い抗腫瘍免疫活性を発現した。OK-PSAおよびPLG-OK-PSAの免疫活性においてNKおよびTの両リンパ球群が必要である事が示唆された。TLR4変異マウスC3H/HeJあるいはTLR4欠損マウスにおいては、OK-PSAおよびPLG-OK-PSAは、共に抗腫瘍活性を発現しなかった。上記のマウス腫瘍モデルにおいて、OK-PSAあるいはPLG-OK-PSA+抗癌剤UFT+放射線療法を施行した。同療法は、OK-432+UFT+放射線療法に比較し、より強い抗腫瘍効果を発現し、ほとんどのマウスで腫瘍の完全緩解を認めた。この時、マウスの体重減少等の副作用は認められなかった。来年度以降、OK-PSAるいはPLG-OK-PSAの臨床試験の実施を計画している。
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