研究概要 |
抗腫瘍免疫療法剤OK-432或いはその生理活性を発現するリポタイコ酸関連分子OK-RSA+テガフール(UFT及びTS-1)+放射線(RT)同時併用療法の抗癌メカニズムをToll-like receptor 4(TLR4)の役割を中心にして検討し、以下に述べる研究結果を得た。1.TLR4或いはMD-2mRNAを発現しているか或いは発現していない頭頸部癌患者10人と健常人5人の末梢血単球より樹状細胞(DC)を調製してin vitroでのOK-PSAのDCの成熟化に及ぼす効果を検索した。OK-PSA処理はMHC classII, CD80,CD83,及びCD86の表面抗原の発現を増強した。また、OK-PSAで刺激したDCはヘルパーT細胞1(Th1)-タイプT細胞反応を誘導しうるサイトカインを分泌し、アロT細胞を刺激しIFN-γを誘導し、アロ抗原特異的細胞障害活性を惹起した。これらの活性はTLR4とMD-2遺伝子の発現に依存していた。2.野生型TLR4を発現しているC57BL/6マウスと(TLR4+/+)とTLR4ノックアウトマウス(TLR4-/-)に同系の腫瘍を移植して、同系のDCに続いてOK-PSAを腫瘍内に投与して治療を行った。TLR4(+/+)マウスではOK-PSAは腫瘍内局所DC投与による抗腫瘍効果を増強したが、TLR4(-/-)マウスではOK-PSA及びDCとOK-PSAとの併用による抗腫瘍効果は認められなかった。しかし、TLR4(-/-)マウスにおいてもTLR4(+/+)由来DCとOK-PSAを投与すると著明な抗腫瘍効果を発現した。3.Meth-A腫瘍を担うBALB/cマウス(TLR4野生型)及びSCC VII腫瘍を担うC3H/HeNマウス(TLR4野生型)においてTS-1を経口投与した後、DCとOK-432を腫瘍局所に投与すると著明に腫瘍増殖を抑制し、有意に生存が延長した。また、腫瘍浸潤及び所属リンパ節由来のリンパ球の細胞障害活性が誘導され、これらの細胞はMHC class 1-拘束性、CD8+T細胞であり、細胞障害性メモリT細胞であった。一方、変異型TLR4を保有するC3H/HeJマウスでは、OK-432による抗腫瘍免疫効果は認められなかった。4.ヒト唾液腺癌細胞において、TS-1とRT併用療法は、reactive oxygen species/reactive nitrogen speciesを産生した。またcaspase-8,-9及び-3を活性化し、アポトーシスを惹起した。また、Thymidylate synthase及びdihydropyrimidine dihydrogenaseの発現の低い腫瘍ほど顕著な抗腫瘍効果を認めた。
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