研究概要 |
口腔癌患者に対するOK-432,UFTおよび放射線治療(RT)の同時併用療法を施行された口腔癌患者67例中、完全奏功(CR)38例(56.7%)、部分奏功29例(43.3%)で奏功率100%であった。OK-432を使用していない14例(RT+UFT療法)ではCRはわずかに2例(14.3%)であった。RT+UFT+OK-432同時併用療法を施行された口腔癌患者のうち、Toll-like receptor(TLR)4およびMD-2両遺伝子を発現している症例TLR4(+)MD-2(+)44例中CR23例(52.3%)、PR21例(47.4%)であったのに対し、TLR4(-)あるいはMD-2(-)の6症例ではCR0例であった。口腔癌細胞は、正常細胞と比較して、NF-κBの活性が有意に上昇しており、5-FUで処理するとNF-κB活性が抑制されアポトーシスが誘導された。C3H/HeN(TLR4野生型)マウスに同系扁平上皮癌細胞SCCVIIをマウス背部皮下に移植して作製した担癌マウスを、RT+UFT+OK-432あるいはOK-432の活性成分OK-PSAで治療すると統計学的に有意な腫瘍増殖抑制効果を認めた。この時、マウス血清中にIFN-γ,TNF-α,IL-2,IL-12,IL-18ならびにNO_2^-/NO_3^-の産生が検出された。腫瘍浸潤リンパ球、所属リンパ節細胞および脾細胞の細胞障害活性が有意に増強していた。また、腫瘍、所属リンパ節および脾臓において、IFN-γ,TNF-α,IL-2,Fas, Fasリガンド(FasL),DR5,TRAILおよびiNOSの発現増強が、RT-PCRおよび免疫染色法にて検出された。一方、C3H/HeJ(TLR4変異型)マウスにおいては、同治療の抗腫瘍効果は極めて弱いものであった。本研究結果より、放射線+経口5-FU系抗癌剤+OK-432同時併用療法が、口腔癌治療において極めて有効である事、その効果においてTLR4を介したシグナルが重要な役割を演じている事が強く示唆された。
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