研究分担者 |
滝川 正春 岡山大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (20112063)
山城 隆 大阪大学, 大学院・歯学研究科, 助教授 (70294428)
黒田 晋吾 岡山大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助手 (40332796)
福永 智広 岡山大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助手 (70362994)
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研究概要 |
本研究は、顎顔面骨格の形成に重要な役割を果たしている軟骨細胞の分化に関与する遺伝子について検討することを目的としている。 1.ラットの様々な軟骨におけるCTGFの発現 6週齢ラットの下顎頭軟骨、下顎骨骨折治癒過程に出現する軟骨、大腿骨成長板軟骨、大腿骨関節軟骨を用い、CTGF, collagen type I, II, X mRNAの発現をin situ hybridizationにより解析した。その結果、type I collagenは大腿骨成長板軟骨では認められなかったが、下顎頭軟骨、大腿骨関節軟骨では表層近くの増殖軟骨細胞に認め、下顎骨骨折治癒過程では凝集した間葉系細胞に発現した。CTGFは肥大軟骨細胞だけでなく、type I collagenと共発現した。以上より、CTGFが軟骨の初期分化に対して何らかの役割を果たしていることが示唆された。 2.発生過程のマウスの顎顔面骨におけるRunx1,Runx2,Sox9の発現 Runx1,Runx2,Sox9 mRNAの発現の解析にはin situ hybridizationを行った。Runx1、Sox9は軟骨とRunx2を発現する骨形成部に隣接して発現した。Runx1,Sox9の発現は骨化と共に著しく減少し、骨化した顎顔面骨には認められなかった。また、Runx2の発現はRunx1の遺伝子破壊の影響は受けなかったが、Runx1の発現部位はwildtypeに比べ、Runx2 knockoutマウスで広がった。以上の結果より、Runx1は初期の膜性骨化に役割を果たしている可能性が示唆された。 3.内軟骨性骨化におけるZac1の機能 軟骨細胞培養系を用いて、軟骨の分化に伴うZac1遺伝子の発現をRT-PCRにより検討した。胎生17日齢ニワトリ胚胸骨より軟骨細胞を分離して3週間培養したところ、経時的にZac1遺伝子の発現は減少した。また、Zac1の軟骨基質代謝への影響を調べるために、Zac1遺伝子をニワトリレトロウイルス系を用いてニワトリ軟骨細胞に導入し発現させ、green fluorescent proteinのみを組み込んだ対照群の細胞と比較検討した。その結果、これらの細胞に軟骨基質の産生減少と分解を促進することが知られているレチノイン酸を作用させると、対照群ではIX型コラーゲンの発現の減少とMMP-13,ADAM-TS5の発現の増加が認められたが、Zac1遺伝子導入群では、これらの変化が顕著に抑制された。以上の結果より、Zac1は軟骨基質代謝を調節することにより軟骨発生制御に関与すること、Zac1の発現が軟骨組織の恒常維持に重要であることが示唆された。 4.レーザーマイクロダイセクション法を用いた分化初期の軟骨細胞が発現する遺伝子のプロファイリング 新生仔マウス下顎頭軟骨から単離したcollagen type Iを発現する軟骨細胞群とcollagen type Iを発現しない軟骨細胞群の2群を用い、それぞれの細胞群が発現する遺伝子のプロファイリングをマイクロアレイ法で行った。これらの方法は下顎頭軟骨の層毎における軟骨細胞の解析に有用なことが示唆された。
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