研究概要 |
本研究では、sPLA2群の生体内機能を明らかにし、個々の酵素の機能的役割分担を確立することを目指している。本年度は新規PLA2群について、細胞に過剰発現させ、細胞機能の体系化を目指すと共に、sPLA2分子種について、特異抗体を用いて各酵素のヒト組織における発現分布の網羅的解析に着手した。 (1)新規PLA2の細胞機能:III型sPLA2,IVC型cPLA2、VIB型iPLA2について、それぞれをHEK293細胞に過剰発現し、機能を調べた。(i)III型sPLA2の酵素ドメインは細胞の形質膜に作用し、X型sPLA2と同様の機構で未刺激細胞からアラキドン酸を遊離する。また、N末とC末に存在する本酵素固有の塩基性ドメインは本酵素がヘパラン硫酸プロテオグリカンに結合するのを助け、結果としてIII型sPLA2はIIA型sPLA2同様にヘパラン依存的経路によってもアラキドン酸を遊離する。(ii)IVC型cPLA2はC末端のisoprenylationを介して小胞体膜に構成的に結合しており、刺激非依存的にアラキドン酸遊離を亢進し、炎症刺激下で更に亢進する。isoprenylation siteの変異導入すると、小胞体への局在ができなくなり、アラキドン酸遊離能が消失する。(iii)VIB型iPLA2は刺激非依存的な脂肪酸の非特異的遊離(膜脂質リモデリング)を著しく亢進し、炎症刺激下で更に亢進する。またVIA型iPLA2と異なり、VIB型iPLA2により遊離されたアラキドン酸は効率良くPGE2に変換される。 (2)sPLA2のヒト組織分布:免疫組織化額染色により、IIA, IID, IIE, IIF, V, X型sPLA2の慢性関節リウマチ、心筋梗塞、肺炎、C型肝炎、大腸癌、生殖器、等における発現を解析中である。
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