研究課題
基盤研究(A)
遺伝性ライソゾーム病の脳障害に対する新しい治療法、ケミカルシャペロン療法に用いる薬を開発するという目的のために、分子、細胞レベルでの基礎的検討を行った。まず、分子量287.40のガラクトース類似カルバ糖、N-オクチル-4-エピ-β-バリエナミン(NOEV)を合成し、物性、機能を調べた。常温で安定である。水に5mMまで溶解する。メタノールやDMSOにはよく溶ける。試験管内でβ-ガラクトシダーゼ活性を阻害する。その化学的測定法を確立し、細胞・組織内濃度の検討を始めた。このシャペロン化合物をヒトβ-ガラクトシダーゼ欠損症患者由来の細胞の培養液に添加すると、4日間の培養で酵素活性が著しく上昇する細胞株があった。世界各国から提供された約50名の患者由来の線維芽細胞の35%に3倍以上の酵素活性上昇を認めた。そしてヒト変異遺伝子を発現するノックアウトマウス由来線維芽細胞でも同じ結果であった。若年型G_<M1>-ガングリオシドーシスの変異にもっとも有効であるが、乳児型、成人型の一部の症例にも効果があった。これまで、モルキオB病の変異には効果が確認できなかった。またNOEV構造を修飾することにより、水に対する溶解度が高まり、おなじ効果を示す化合物が得られた。試験管内阻害、細胞内活性発現の変異特異性を調べたところ、NOEVの最大有効濃度は、変異により少なくとも10倍の差があった。シャペロン化合物と変異酵素の分子反応における構造機能相関解析を次の課題として計画中である。更にグルコース類似のシャペロン化合物、N-オクチル-β-バリエナミン(NOV)のβ-グルコシダーゼに対する効果を調べた。NOEV同様、試験管内での活性阻害、細胞内での活性発現誘導効果を示した。これはゴーシェ病への新しい治療薬として期待される。
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