1.動物実験における酸化ストレス評価に関する研究 生体内における酸化ストレスを評価する指標として、ビタミンC、E、脂質ヒドロペルオキシドを使い、各種病態におけるこれら指標の動態を検討した。その結果、老化においては脂質ヒドロペルオキシドが優れていることが、老化促進モデルマウスの実験から判明した。薬物による肝炎モデル動物ではビタミンCが最も鋭敏な指標であることが判明した。 2.この50年間ビタミンCと同等の活性があるとされてきたデヒドロアスコルビン酸の生理活性をODSラット(ヒトと同様ビタミンCを体内で合成できない)を用いて検討した結果、デヒドロアスコルビン酸の生理活性はビタミンCの10%程度であることが判明した。同じ手法を用いて、天然物である2-O-(β-D-glucopyranosyl)ascorbic acidにビタミンC活性があることが判った。 3.動脈硬化に関する研究 動脈硬化の初発反応は低密度リポタンパク質(LDL)の酸化であると考えられている。しかしその化学的意味は全く判っていなかった。本研究において、LDLを酸化すると、LDLのアポリポタンパク質B-100(アポB)が分解すること、その反応性はビタミンEと同程度で血液中の他のタンパク質よりずっと高いことがわかった。さらに、酸化分解したアポBはヒト血液中に存在し、その量を定量すると、動脈硬化の診断に使われている臨床指標と良好な相関をした。アポB分解生成物の定量にはWestern blotを用いるため、27時間もの時間がかかり、実用には向かない。そこで実用的な方法を開発する目的で、LDLの酸化を評価する別の方法を検討した。その結果、酸化とともにLDLの粒子径が小さくなることを発見した。この発見は昔から、動脈硬化の危険因子とされるsmall dense LDLに酸化反応が関与することを初めて明らかにした点でも重要な発見である。
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