研究課題/領域番号 |
14208012
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
文化財科学
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
園田 直子 国立民族学博物館, 文化資源研究センター, 助教授 (50236155)
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研究分担者 |
日高 真吾 国立民族学博物館, 文化資源研究センター, 助手 (40270772)
岡山 隆之 東京農工大学, 大学院・共生科学研究部, 教授 (70134799)
大谷 肇 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (50176921)
増田 勝彦 昭和女子大学, 大学院・生活機構研究科, 教授 (40099924)
金山 正子 元興寺文化財研究所, 歴史民族資料研究課, 主任研究員 (20311491)
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研究期間 (年度) |
2002 – 2004
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キーワード | 酸性紙 / 強化処理 / セルロース誘導体 / ペーパースプリット / 劣化度 / 熱分解ガスクロマトグラフィー / アコースチックエミッション / 紙力測定 |
研究概要 |
酸性紙の保存対策においては、脱酸性化処理に比べて、紙の強化処理はあまり議論されていない中、本研究は、脆弱化した大量の図書資料に対応できる強化処理法の研究開発に目的を絞った。 1.紙資料の劣化度調査では、官能試験、物性試験、化学分析、それぞれの手法の相関から劣化度の評価法を見出さんとした結果、紙を端から丸めるローリングテスト、アコースチックエミッション、熱分解ガスクロマトグラフィーが、紙の劣化度を判定する新しい可能性として十分に応用できることを確認した。 2.紙資料の強化処理に関しては、三年間を通じて基礎研究は終了した。 (1)強化剤としてのセルロース誘導体の絞り込みとともに、処理剤の調整、処理剤を紙に均一に定着させる手法の開発研究を進めたところ、脆弱化が進んでいない資料には、セルロース誘導体による強化が有効に作用することが明らかになった。処理の差異に水を使用すると、乾燥に伴い波うちが生じる上、乾燥時間が長くなり効率的に処理をおこなうことができない。そこで、セルロース誘導体のうち有機溶剤に可溶なものはそのまま溶液として調整するが、水のみに可溶なものは完全に水に溶解させた後、有機溶剤に加えて強い攪拌を与えても均質な分散液とすることを考察した。この処理液に中和剤を添加すると、紙の劣化が抑制できることも実験的に照明した。噴射機での塗工により、紙資料の形態を問わず、処理剤を短時間で均一に紙の表面に塗布することができる。この原理は二件の特許出願となった。 (2)脆弱化が進んだ資料には、より抜本的な評価として、どの程度の劣化度の紙ならば安全に処理できるのかを劣化度の異なるサンプル紙を作成し、追究した。 今後の展開としては、上記ふたつの手法から外れる、中間の劣化度の紙資料に対応できる処理法の開発が急がれる。既存のセルロース誘導体よりも柔軟性のある強化剤の開発、塗工法の改良をも視野に入れていかねばならない。この問題が解決すれば、脆弱化した紙資料の大量強化処理という、国内外の図書館や文書館にとって緊急性のもっとも高い研究にひとつの指針を提示できよう。
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