古代中国の石窟・墓室等塑像・壁画の材質・構造解析と保存修復法に関する研究

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14208013
• 研究機関: 独立行政法人文化財研究所奈良文化財研究所
• 研究代表者: 肥塚 隆保 独立行政法人文化財研究所奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 保存修復科学研究室長 (10099955)
• 研究分担者: 深澤 芳樹 独立行政法人文化財研究所, 奈良文化財研究所・平城宮跡発掘調査部, 考古第3調査室長 (40156740) ; 高妻 洋成 独立行政法人文化財研究所, 奈良文化財研究所・埋蔵文化財センター, 主任研究官 (80234699) ; 村上 隆 独立行政法人文化財研究所, 奈良文化財研究所・飛鳥藤原宮跡発掘調査部, 主任研究官 (00192774) ; 山崎 隆之 愛知県立芸術大学, 美術学部, 教授 (60015279) ; 降幡 順子 独立行政法人文化財研究所, 奈良文化財研究所・埋蔵文化財センター, 保存修復科学研究室研究員 (60372182)
• キーワード: 塑像 / 壁画 / 材質 / 構造 / 環境 / 保存修復 / 劣化 / 石窟

研究概要

本研究は古代塑像・壁画の美術史的な調査と材料科学的な調査を日中共同でおこない、古代塑像・壁画の材料と製作技法や、年代などに関する調査・研究をおこなうとともに、長期間における劣化とその因子について調査し、個々の塑像・壁画に適した保存修復技術の開発など総合的な研究を目的としている。
本年度は、日本国内において壁画が残っている古墳の中で、鳥取県国府町にある梶山古墳の壁画の分析と保存環境調査、中国共同研究者の招へい、長期暴露試験を継続している顔料の変退色調査をおこなった。
梶山古墳における壁画の分析と保存環境調査では、昨年度導入した携帯型蛍光X線元素分析装置による壁画顔料の分析、可変長可視光線、近赤外線および紫外線による壁画の観察、ビデオマイクロスコープによる顕微観察、古墳石室内の温湿度環境調査を実施した。その結果、415nmの可視光により壁画を明瞭に観察できること、壁画顔料は赤鉄鉱と思われる微粒子が混在した土状のもので描かれていることなどが明らかとなった。
中国共同研究者の招へいでは、これまでおこなってきた壁画・塑像の分析調査・保存修復に関する共同研究の成果の保存科学研究集会(奈良文化財研究所主催)における研究発表・討論ならびにわが国の装飾古墳壁画の保存状態などの現地調査をおこない、日中における壁画・塑像の分析調査と保存修復に関する問題点の共有とその解決法に関する有意義な討論をおこなった。
継続中の顔料長期暴露試験では、人工的に合成された水銀朱が完全に退色するものと暗褐色に変色するものとに分かれることが明らかとなってきている。

研究成果

• [文献書誌] 高妻洋成, 肥塚隆保: "史跡梶山古墳石室壁画の調査"奈良文化財研究所研究紀要2004. (印刷中). (2004)
• [文献書誌] 高妻洋成, 肥塚隆保, 沢田正昭, 杜曉帆, 杜曉黎: "中国・大召寺壁画の非破壊分析"文化財保存修復学会第25回大会研究発表要旨集. 24-25 (2003)