研究概要 |
本研究では,医薬品化学構造と患者の特異性を示す単塩基多型(SNP),さらに治療効果の測定に至るまでのすべての段階でデータを収集し,またこのような高次元データを解析するためのマイニング技術を確立することを目的とした.以下に本研究の主要成果の概要を項目に分けて示す. 1.グラフとして表現される医薬品構造から線形フラグメント属性を多数生成し,さらにマイニングを効率的に行うために,相関をもとに有効な属性を選択する方法を確立した. 2.高次元のマイニングで有効なカスケードモデルの方法を発展させ,ルール群の組織化,冗長なルールの除去を可能とし,さらに付加相関とリッジ情報によるルール理解法を完成させた. 3.上記の方法を使用して,ドーパミン受容体のアゴニストおよびアンタゴニストに対するファーマコフォアを発見することに成功した. 4.インスリン抵抗性糖尿病患者を対象にDNAマイクロアレイを用いて,候補SNPとその遺伝子発現をリンクさせ機能的(臨床上有用)なSNPを同定する作業に成功した.さらに,遺伝子発現量が大きく変化する対象を調査することにより,運動刺激,胃粘膜へのピロリ菌刺激,retinoicacidによる抗ガン作用において,重要な遺伝子の発見に成功した. 5.レセプターとリガンドの相互作用およびRNAへの転写におけるSNPの影響を予測するためのinsilico技術を発展させた. 6.老人病院の診療記録と肝臓における医薬品代謝で重要なCYP450のSNPを統合的に調査して,医薬品問の相互作用が医療の質に重要な影響を与えていることを確認した. 7.数値相関ルールを抽出するためのマイニング技術,さらにそれらを分類のために用いる方法を確立した. 8.診療効果を測定するための簡便な生理心理学的測定法として,脈波測定が多方面に有効であることを確認した.
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