研究課題/領域番号 |
14208057
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
松井 秀樹 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (50005980)
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研究分担者 |
佐藤 裕樹 東北大学, 金属材料研究所, 助教授 (20211948)
二田 伸康 東北大学, 金属材料研究所, 助手 (30361174)
波多野 恭弘 東北大学, 金属材料研究所, 助手 (20360414)
福元 謙一 福井大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (30261506)
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キーワード | 照射損傷 / 照射硬化 / 転位障害物 / 電顕内その場観察 / 分子動力学 / 鉄 / 銅 / ヘリウム気泡 |
研究概要 |
本年度はTEM内引張その場観察の実施と、平行して分子動力学法による転位と障害物の相互作用のシミュレーションを行った。TEM内引張試験に関しては、試料の作製法に革新的な手法を開発することが出来た。これは最近別途導入されたFIB装置を使用するもので、照射済みの引張試験片等から10ミクロンx20ミクロン程度の寸法の試料を採取し、これを別途FIB装置で整形した基盤を介してTEM内引張ホルダーに取り付けて試験するという方法である。これにより、強く放射化された試料に対する実験も殆ど被曝なしに行うことが出来るだけでなく、貴重な照射済み試料を実質的に非破壊で試験できるようになった。さらに、転位チャンネリングのようにバルク材でしか発達しにくい組織をバルクで試験して発現させ、その試料から薄膜を採取してその場観察することが出来るようになった点は大きな成果といえる。 もう一つの成果としては、銅にイオン加速器でヘリウムを注入し、極めて薄い層状領域にヘリウム気泡を生成した試料に対して、TEM内引張試験を行った。比較材として水素イオンにより空洞組織を形成させた試料を作成し、ヘリウム気泡とヘリウムを含まない単純な空洞の転位移動に及ぼす障害物としての強度を比較した。この結果、同じ寸法で比較すると、ヘリウム気泡の方が単純空洞よりも転位移動に対する障害としては強いことが明らかになった。 分子動力学によるシミュレーションでは、銅中の空洞と刃状転位、らせん転位の相互作用を扱った。転位周辺の原子の位置情報から電顕像のシミュレーションを行い、数ナノメートルの領域での障害物と転位が電顕でどのように見えるかを調べた。その結果、分子動力学法で障害物の両側を転位双極子として張り出すような条件では、電顕像はそのようには見えないことが明らかとなった。さらに刃状転位が空洞を横切る際の空洞中心線からのずれ、これを衝突パラメータと呼ぶことにするが、が障害物としての強度にどのような影響を及ぼすかを調べた結果、上下方向に著しく非対称であることが分かった。これは余剰半原子面がより多く空洞内に含まれる条件、すなわち衝突パラメータが負の領域が、圧縮歪み場をより効果的に開放するために、空洞と転位の結合を強くし、その結果障害物としては強くなるためであることが明らかとなった。これらの効果を取り入れて実験との比較を行う必要がある。
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