研究課題/領域番号 |
14208058
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
杤山 修 東北大学, 大学院・工学研究科, 教授 (70005479)
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研究分担者 |
田中 紘一 東北大学, 大学院・工学研究科, 助手 (10005928)
新堀 雄一 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (90180562)
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キーワード | マイクロカロチメトリー / 熱量滴定 / 錯生成エンタルピー / アクチノイド / 平衡定数の温度依存性 / 高レベル放射性廃棄物 / 地層処分 |
研究概要 |
放射性廃棄物の地層処分の安全評価においては、高温での諸反応の平衡定数が必要である。これを推定するために必要となる反応のエンタルピーは、マイクロカロリメータを用いる熱量滴定により原理的に求めることができるので、安全上重要となるアクチノイドの溶液反応についてこの方法の適用可能性を検討するのが本研究の目的である。 平成14年度は、機器(マイクロカロリメーターITC4200)の入手と調整、使用技術の習熟等に充てるとともに錯生成定数の温度依存性を予測するための理論や経験式を調査・整理した。平成15年度はこれに基づき、アクチノイドの代替化学アナログとしてユウロピウムを選び、代表的な有機酸であるグリコール酸、リンゴ酸との相互作用をマイクロカロリメーターを用いて検討した。ユウロピウムとの錯生成の検討に必要となる有機酸のプロトン化については、プロトン付加平衡定数を電位差滴定により決定し、これを用いてエンタルピーを求めることにより、-1から-3kJ/mol程度の微小なΔHを±0.01程度の精度で決定できた。これは、平衡定数の温度依存性(ファントホッフプロット)からΔHを近似的に求める方法(ΔH=5kJ/molのときの平衡定数の温度依存性は50℃の温度差に対してΔlogK〜0.14)に比べてより優れた精度であることを示している。次にグリコール酸、リンゴ酸とユウロピウムの錯生成について検討したが、リンゴ酸との錯生成では1:1から1:3の逐次の錯生成が起こり、遂次ステップごとにΔHが正負の符号を変えるため、錯生成の平衡定数とエンタルピーを、熱量滴定曲線から同時に求めるには誤差が大きくなりすぎて困難であることが判明した。従ってこの場合もプロトン化反応の場合と同様、平衡定数を別法で精度よく求め、これを用いて熱量滴定によりエンタルピーを決定することが好ましい。また、ユウロピウムの化学アナログが成立するとすれば、錯生成の反応熱は高々数kJ/mol程度であるので、より低い濃度でアクチノイドを対象に測定を行うには、かなりの困難が予想される。今後さらにユウロピウムの系について詳細な検討を行い、アクチノイドの錯生成への適用性について考察する。
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