研究概要 |
微生物はそれ自体では地理的移動能力がないが,同じ遺伝子が異なった環境中の微生物から見つかることがある。本研究では,異なった環境に住む微生物間での遺伝子の伝達機構を明らかにし,さらに遺伝子が環境間を循環しながら広範囲に広がってゆくことを観測と実験で解明することを目標としている。 研究代表者鈴木と分担者中野のグループおよび分担者那須はそれぞれ薬剤耐性遺伝子,病原性遺伝子を標的とし,それらの分布と伝達様式を調べ,分担者千浦は最近発見された非特異的遺伝子伝達粒子での特定遺伝子の伝達性を調べている。鈴木は,本年度は新規オキシテトラサイクリン耐性遺伝子tet34の環境中分布,およびリボソーム保護タンパク遺伝子tetMが海洋環境,魚類腸内に広く分布することをはじめて明らかにした。那須は大阪の河川にベロ毒素遺伝子を持つ菌が増殖可能な状態で棲息していることを明らかにした。さらに,あたらしい遺伝子検出法を開発し,今後環境試料への適応が期待される。千浦はtet34とtetMを保有するVibrioが伝達粒子を産生し,それが大腸菌へ感染して薬剤耐性能を付与することを明らかにした。分担者木暮は同種でも変異のある細胞の分離法開発およびlux遺伝子の進化を調べている。発光能をもつ魚類ヒイラギに共生するVibrio, Photobacteriumにおけるlux遺伝子の多様性と伝達が明らかになってきた。luxはVibrio, Alteromonas, Enterobacteriaceae間でも水平伝播している可能性が強く示唆された。 以上のように,2年目は全ての分担者が研究を加速的に展開し,予定通りの成果をあげている。
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