研究課題/領域番号 |
14208066
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
清水 透 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (40118956)
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研究分担者 |
黒河 博文 東北大学, 多元物質科学研究所, 助手 (80359546)
佐上 郁子 東北大学, 多元物質科学研究所, 講師 (10143033)
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キーワード | 分子スイッチ / ヘム / 一酸化窒素 / キナーゼ / センサー / 蛋白合成 / 遺伝子工学 / ポルフィリン |
研究概要 |
網状赤血球において、ヘム結合型ヘモグロビンの蛋白質の翻訳・合成はヘムの濃度に依存している。即ち、ヘムとグロビンの濃度比が常に1になるように調節されている。この調整は、ヘムに制御される真核生物のイニシエーションファクターelF-2αキナーゼ(HRI)によって行われる。このグロビン蛋白質の翻訳・合成は又、ヒートショックプロテイン、単鎖RNA, NOなどによっても調節されると報告されている。しかし、その調節の分子論的機構についてはこれまで正確に理解されていなかった。平成15年度では、HRIのヘム結合部位(HRINTD)と全長の大腸菌での大量発現系の構築に成功した。又、NOがキナーゼ反応を活性化する機構について始めて構造的に決定的な知見を得た。今回大腸菌で大量発現して得た全長型HRIは確かにNOにより活性化されることを確かめた。HRINTDめヘムは鉄3価でも鉄2価でも6配位構造であり、軸配位子は共に窒素であることが、各種分光学から示唆された。又、NO結合型もNOの逆側に窒素が配位した6配位錯体であった。しかし、全長型HRIでは、特に、鉄3価では、6配位錯体ではあるが、1つの軸配位子がシステインの硫黄であることが、今回始めて示唆された。さらに、NOが鉄2価に配位することにより、NOの逆側の配位子は離脱し、5配位型NO錯体の生成が今回始めて示唆された。このNOにより活性化される機構は、可溶性グアニリルサイクレースにおいてNO添加により、5配位のNO錯体が生成されて活性化されるヘム構造変化と同じである。今回得られた結果より、ヘムに制御される蛋白質の翻訳・合成において、NOの関与が重要であることが示唆された。
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