研究概要 |
栄養不足、ウイルス感染など様々な外的なストレスに依り蛋白質翻訳(合成)が停止する。赤血球には生体内の酸素の運搬に重要な働きをするヘモグロビンが多量に存在する。このヘモグロビンはヘムとグロビン蛋白質が1:1で存在しており、この濃度比が変化すると病態が発現する。このバランスを保持するために、赤血球には、ヘムの濃度をセンスして、もし、ヘム濃度が低下するとグロビンの合成を停止させる酵素、ヘム制御キナーゼ(HRI)が存在する。一方、ヘムの合成にはチトクロムP450が関わっており、その合成反応はPCBやハロエタンなどの環境汚染物質により阻害される。NOガスもその合成反応を制御する。本研究では、分光学や遺伝子工学の手法を用いて、環境汚染物質によるヘム合成・分解の阻害、ヘム分解物による蛋白質合成阻害、NO合成阻害、NO-ヘム相互作用、ヘムセンサー酵素、及びNOが関わるシグナル伝達などの機構を明らかにし、ポルフィリン症の基礎的な解明に寄与した。国際会議、及び国際雑誌に発表できた研究成果としては、#1,HRIのヘム環境を明らかにし、NOがHRIの活性を著しく上昇させることを示した。#2,NO合成酵素の細胞表面蛋白との相互作用やヘムが関わる電子伝達について興味ある結果を得た。#3,NOガスやCOガスをセンスしヘムの酸化還元状態で制御されるヘムセンサー酵素の構造・機能相関関係を解析した。さらに、最終年度においては、基盤(S)の研究と重複する形で、生物時計に関わるヘム制御転写因子とDNAとの相互作用、制御因子蛋白質とヘムとの相互作用、COガスとの相互作用の研究を行った。
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