研究分担者 |
鈴木 敦巳 熊本大学, 工学部, 教授 (50040390)
木田 建次 熊本大学, 工学部, 教授 (00195306)
長谷 義隆 熊本大学, 理学部, 教授 (40040109)
松田 博貴 熊本大学, 理学部, 助教授 (80274687)
小池 克明 熊本大学, 工学部, 助教授 (80205294)
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研究概要 |
(1)干潟環境の改善策として、昨年度に引き続き「なぎさ線の回復」、「人工干潟の創生」、「耕耘による干潟改善」等の工法を有明海の現地干潟で実施し、それぞれの効果について追跡調査を行い、効果の確認と継続調査中である。また、干潟の熱収支環境を計測するために、現地干潟に観測塔を設置し、継続観測を行った。 (2)3次元の潮流解析モデルとして、POMモデルを有明海・八代海に適用し潮汐流動特性について調べるとともに、八代海の過去26年間の海域環境の変動特性について調べた。 (3)底質改善方法として、緩やかで持続可能な底質のCOD低減策として潮汐によって富酸素海水を底質に透過させる方法に着目し、室内実験と現地実験を試みた。その結果、底質改善策として富酸素海水透過の有効性が明らかになった。COD原因物質のほぼ2/3が海水に溶けだし、残りの1/3が酸化されている事が判明した。しかし、現地カラムでも、浸透圧によるカラム内の底質圧密により、透水性の低下傾向が認められた。 (4)熊本港の干潟再生試験サイト「野鳥の池」の底質試料を用いた底質試料からのDNA抽出法の検討を行った。その結果、Fast DNA SPIN Kit for soil (Qbiogene社)を用いた方法が最適であることが判明した。本年度7月から9月にかけて実施した干潟耕耘による環境改善試験での微生物群集の変遷を分子生態学的手法により解析した。その結果、耕耘前の底質中には、硫黄酸化細菌と硫酸還元菌が優占していたが、耕耘直後では好気性従属栄養細菌が優占することが判明した。また、耕耘完了後14日後には元の微生物相に戻ることが分かった。 (5)前年度に引き続き,有明海南部を中心として,有明海域の表層水および海底表層堆積物について,堆積物特性ならびに底生有孔虫群集・珪藻群集・花粉分析の検討を行った。さらに比較検討のため,八代海域において同様の調査を実施した.これらから,降雨などの突発的な海域環境の変化に対応して,表層水及び堆積物中の生物群集が変化することを明らかにし,学会等により発表した. (6)八代海全域より採集した底質試料(236点)を対象に、炭素・水素・窒素の含有率を調べた。その結果、炭素含量は八代海西部の御所浦島・獅子島・伊唐島・長島東岸の試料において、平均4-5%程度と高値を示したが(最大値は9.2%)、八代市および水俣市周辺の底質は、平均値(2.8%)と同等かそれよりやや低かった。このため、八代海では人間活動以外の炭素供給源が存在する可能性が窺えた。水素および窒素の含有率については、大きな地理的差異は認められなかった。 (7)有明海・八代海の流域圏の中から、本学の位置する白川流域を取り上げ、当該流域住民に対するアンケート調査を実施し、有明海・八代海の環境悪化の現状認識や環境保全に対する取り組み姿勢に影響を与えている事項並びに、環境保全対策を進める上での重要な視点等について調査・分析した。さらに、これら一連の調査・分析に基づき、環境再生に向けた陸域側における取り組みについての構想的なスキームを検討した。 (8)有明海環境の経年変化解析を,(1)統計的手法に基づく数理モデルと(2)リモートセンシングの2つを用いて行った。大気効果を軽減し,気象データを考慮した海面温度推定法として座標・水深・衛星データを変数とする多変量回帰モデルを考案した。推定結果から温度分布の異方性の季節変動,および海面温度は対象日に近い過去の降水量との対応が良いことなどがわかった。
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