研究分担者 |
木田 建次 熊本大学, 工学部, 教授 (00195306)
長谷 義隆 熊本大学, 理学部, 教授 (40040109)
秋元 和實 熊本大学, 沿岸域環境科学教育研究センター, 助教授 (70222536)
松田 博貴 熊本大学, 理学部, 助教授 (80274687)
小池 克明 熊本大学, 工学部, 教授 (80205294)
|
研究概要 |
(1)「人工干潟」を創生し、環境モニタリングを実施して、干潟環境変動のメカニズムについて調べた。この結果、潮溜まりを持つ人工干潟が、生態系の多様性と場の生産性を挙げていることが示唆された。また、熊本港北側干潟域に観測塔を設置し、干潟上の熱・物質収支の連続観測を実施した。潮汐に伴って生じる干出・冠水のサイクルに伴い、干潟底泥の温度や、上空大気への熱・水蒸気輸送機構の定量的評価を行う事が出来た。 (2)3次元の潮流解析モデルとして、σモデルを有明海・八代海に適用し潮汐流動特性について調べるとともに、有明海の流動と堆積特性に着目した海域環境の変動特性について調べた。 (3)自然の潮汐エネルギーを動力源として,海面付近の富酸素海水を底質に供給することによって,緩やかに底質を再生する持続的干潟再生技術の開発を目指した。室内におけるバッチ試験とカラム試験の結果、海水透過による底質浄化は,還元物質の溶出と酸化による事を明らかにした。現地干潟で底質への海水透過試験を行ない,室内試験と同様の結果を現地で確かめる事ができた。 (4)干潟底泥では、嫌気的環境でも好気的環境でも代謝経路を切り替えて生存できるAllochromatium属やThiobacillus属などの硫黄代謝細菌群による硫黄サイクルが主要な代謝経路であると考えられた。干潟を耕耘すると、16SrDNAを標的とした解析ではそれまで優占していた硫黄代謝細菌群は低下し好気性従属栄養細菌群が優占した。nirS遺伝子を標的とした解析でも耕耘直後にThiobacillus属に近縁な細菌が見られた。 (5)海洋ならびに底質環境の特性を把握することを目的に,有明海では熊本市沖の堆積物を,八代海では微小生物相を研究し、有明海および八代海において,表層堆積物および水塊の分布特性を明らかにした.これらを,画像データベースとして公表した.また、有明海域の環境変遷を熊本平野および有明海南東海域海底堆積物の層相と花粉および珪藻化石群集の変化を明らかにすることで解明。また、最終氷期以降、海底表層堆積物および海水の珪藻群集の変化から、有明海域では約160〜30年前から富栄養化に伴う珪藻群集が現れていることが明らかになった。 (6)八代海北部より採集した底質試料について、5種の重金属(Fe, Pb, Cu, Zn, Hg)濃度と有機炭素量を測定した。全般に、球磨川河口周辺においてFe, Pb, Cu, Hg濃度と有機炭素量が低く、その分布に地理的差異が認められた。八代海底質のFe, Pb, Cu, Zn濃度は約25年前の値と同程度であり、全国平均値より低い傾向を示した。Hg濃度はやや高値を示したが、過去25年間で半減しており、その環境負荷が軽減している様子が窺えた。 (7)陸域側の汚染防止策の提言を目的に、有明・八代両海の沿岸域・流域圏内自治体および一般住民に対する意識調査を行った。これらの調査結果等に基づき、環境再生協力金の徴収と地域通貨の導入による地域経済活動の活発化とこれに伴う税収増大・財政力増強によって、環境再生事業及び地域活性化事業を総合的にマネジメントするスキームを提案した。 (8)リモートセンシング学および地球統計学という地球情報学的観点から閉鎖性海域環境の時空間変化を詳細に抽出することを目的とし,現地測定データと衛星画像データの新たな解析手法を提案した。特に、干潟堆積物の構成鉱物を反映した地質的分類法の開発、海面温度と栄養塩濃度の推定法を開発した。
|