研究概要 |
炭素数が60を越える長鎖脂肪酸を有する,結核菌関連細胞表層糖脂質TDM,は免役活性化に基づく抗腫瘍性を有しており,大阪大学山村一門を中心にこれまで非常に多くの研究が行われて来たが,高い毒性の故に,遂に実用化には至らなかった.本研究者はより短い脂肪酸鎖よりなる,TDCMの類縁体を合成する研究を展開し,これらの化合物ががん転移阻害作用,制がん性を示す一方で,毒性を示さないことを明らかにしている.そこで今年度は,合成法を徹底して改良し,β-ケトエステルの野依還元と,当研究室の独自技術である還元的エーテル化反応を鍵段階として,7行程で目的物に至る,新たな効率的手法を開発し,25種の類縁体合成に成功した.合成した,TDCM類縁体に関して,免役活性化剤としての検定を行うべく,海外共同研究者であるパリXII大学Dulce P.Garcia教授に送って,検討を開始した.次の2年間に,大量合成法を確立し,実用化への道をたどりたいと考えている.
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